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2020年10月31日
「菅さんも、しどろもどろになっている。実はこの問題をよく分からないで答弁しているのかな。私大所属の会員が『24%にとどまっている』と答弁したが、任命拒否した6人の半分が私大だから、首相が言う『多様性』に逆行している」
「ここにきて1983年の『政府が行うのは形式的任命にすぎない』という政府答弁を覆すのは、国会への冒瀆(ぼうとく)だ。それまで存在しなかった法解釈 の文書を2年前に突然作って内閣法制局に確認させながら、『政府としての一貫した考えだ』という虚偽のストーリーをつくっているのが実情ではないか」
「『中央政府に盾突くような自治体は許さない』という態度。沖縄は他の自治体への見せしめだ。地方自治体には中央政府の暴走を止める役目があるが、安倍、 菅両政権は権力を暴走させないための『ブレーキ』を破壊し続けている。内閣法制局長官や検察幹部の人事への介入も、今回の学術会議も同じだ」
「ゼミの学生から、ツイッターなどで色んな人がからんできていると聞いた。私のことを中傷する嫌がらせですね。レッテルを貼ることで学界や社会の中で私を孤立させようとしている」

 30日の参院本会議を傍聴した岡田正則・早稲田大学教授の言葉。
 法改正にあたり首相が「形式的任命」と国会で答弁した内容を、後の内閣が勝手に変更して政権と与党に批判的な意見を述べる研究者をこの国と社会のためで はなくみずからの保身のために学術会議から排除する。これは内閣と政権与党による国会と主権者である国民に対する重大な背信行為に他ならない。
 拒否された6人のうち私大所属は3人、女性が1人、東京慈恵会医科大からは初の会員推薦者など「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが出ないことも踏まえ」との国会での菅首相の答弁は事実の前に根底から破綻している。
 そもそも国会議員の女性比率10% 、政党交付金172億円でそこから買収資金1億2000万円を河井議員らに供与して犯罪の原資とするような政党に、日本学術会議の予算や組織のあり方を議 論する資格はまったくない。 岡田教授が指摘するように、内閣法制局長官や検察幹部の人事介入によって官僚組織と政治を私物化し、科学研究に対しても人事で介入するこの政権と政党が莫 大な交付金や官房機密費を浪費して居座るような国に真っ当な未来はない。
《菅義偉首相にとって初の代表質問が30日の参院本会議で終わった。議論が白熱したのは、首相が日本学術会議が推薦した6人の会員候補を任命拒否した問題だ。6人のうちの1人である岡田正則・早稲田大学教授が傍聴した。
おかだ・まさのり 専門は行政法。著書に「国の不法行為責任と公権力の概念史」
 学術会議問題について首相答弁が始まると、野党席から一斉にヤジがあがる。首相は言葉を詰まらせた。
 「菅さんも、しどろもどろになっている。実はこの問題をよく分からないで答弁しているのかな。私大所属の会員が『24%にとどまっている』と答弁したが、任命拒否した6人の半分が私大だから、首相が言う『多様性』に逆行している」
 首相は「必ず(学術会議の)推薦の通りに任命しなければならないわけではない」というフレーズを繰り返した。安倍政権だった2018年11月、内閣府の学術会議事務局が作成した文書に盛り込まれた文言だ。
 「ここにきて1983年の『政府が行うのは形式的任命にすぎない』という政府答弁を覆すのは、国会への冒瀆(ぼうとく)だ。それまで存在しなかった法解 釈の文書を2年前に突然作って内閣法制局に確認させながら、『政府としての一貫した考えだ』という虚偽のストーリーをつくっているのが実情ではないか」
 沖縄・辺野古への基地移設問題で、安倍政権は2015年、埋め立て承認を取り消した沖縄県に対抗措置をとった。岡田氏は、これに抗議する学者の共同声明 に呼び掛け人として参加した。政府の政策に表立って抗議する活動は初めてだったという。沖縄の問題は、学術会議の問題にも通じると感じている。
 「『中央政府に盾突くような自治体は許さない』という態度。沖縄は他の自治体への見せしめだ。地方自治体には中央政府の暴走を止める役目があるが、安 倍、菅両政権は権力を暴走させないための『ブレーキ』を破壊し続けている。内閣法制局長官や検察幹部の人事への介入も、今回の学術会議も同じだ」
 首相は任命拒否が「学問の自由の侵害にはあたらない」というが、メディアなどで手法の「違法性」を訴えている岡田氏の周囲には「影響」が出始めている。 「ゼミの学生から、ツイッターなどで色んな人がからんできていると聞いた。私のことを中傷する嫌がらせですね。レッテルを貼ることで学界や社会の中で私を 孤立させようとしている」
 それでも学術会議問題で発信を続けるという。
 「これを機に若い人たちに日本の学術や、政府と学問の関係について関心を持ってもらいたいから」(小林豪)》


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2020年10月29日
「(6人を除外する前の105人分の推薦名簿は)見ていない」9日
→「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが出ないことも踏まえて、多様性を念頭に私が任命権者として判断を行った」28日
〈この日、大西隆・元学術会議会長(東大名誉教授)が野党側に提供した資料によると、東京大在職者や関東地方の会員の割合は低下傾向にある。東大は 2020年10月時点で16・7%で、11年10月(28・1%)から低下。関東地方も49・5%(20年10月)と59・5%(11年10月)から減っ た。女性会員の割合も37・7%と増加。学術会議側は「会員選考の際に、ジェンダー、地域、所属、分野、年齢の多様化を図ってきた成果」としている〉

日本学術会議法第七条2「第十七条の規定による推薦に基づいて 、内閣総理大臣が任命する」、第十七条「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦する」
 日本学術会議法は会員選考の基準を「優れた研究又は業績がある科学者」と定めており、公立機関か民間か、年齢や出身大学、地域などを基準としてはいな い。むしろ会議みずからの努力によって特定研究機関や地域への集中を避け、女性の割合も37・7%に増やしている。政府が恣意的な理由で学術会議会員の任 命に干渉し特定の会員の任命を拒否するのは、学術会議法に明確に違反する暴挙でしかない。
 学術会議を問題視する自民党の女性議員は衆参合わせて40人、同党国会議員395名のわずか10%に過ぎない。学術会議予算10億に対して自民党の政党 交付金は2020年度172億円。こういう政党への国税投入こそ、無駄の最たるものだろう。「既得権益打破」や「女性活躍」を掲げるならまずみずからの組 織を槍玉にあげたらどうか。
 ひたすら臨時国会開設も記者会見からも逃げ、ようやく開かれた国会でひたすら原稿を読み上げ支離滅裂な答弁に終始するこの人物にこの国の未来を築く資質も資格もない。

《菅義偉首相にとって初の国会論戦が28日始まった。衆院代表質問で、合流新党・立憲民主党の枝野幸男代表は、1年以内にある衆院選を見据え、「コロナ 後」の社会像や経済政策で論戦に挑んだ。議場がもっとも白熱したのは、日本学術会議の任命拒否問題だった。与野党の激しい攻防を予感させる幕開けとなっ た。
 この日の代表質問で最も議場が沸いたのは、首相の答弁が日本学術会議会員の任命拒否問題に差し掛かった時だった。
 枝野氏は「(学術会議が)推薦された方を任命しないことは、条文上、明らかに違法だ」と言い切り、6人を任命しなかった理由などをただした。
 これに首相が「人事に関することで答えを差し控える」と具体的な説明を拒むと、その答弁が聞き取れなくなるほどのヤジが野党席から飛んだ。
 「ちょっと静かにしてもらえないですか」
 答弁内容が書かれた紙を読み上げていた首相はしびれを切らし、後ろを振り向いて大島理森議長に注意を要求。ざわめく議員を前に首相は「民間出身者や若手 が少なく、出身や大学にも偏りが出ないことも踏まえて、多様性を念頭に私が任命権者として判断を行った」と続け、任命除外が自身の判断であることを強調し た。
 しかし、この日、大西隆・元学術会議会長(東大名誉教授)が野党側に提供した資料によると、東京大在職者や関東地方の会員の割合は低下傾向にある。東大 は2020年10月時点で16・7%で、11年10月(28・1%)から低下。関東地方も49・5%(20年10月)と59・5%(11年10月)から 減った。女性会員の割合も37・7%と増加。学術会議側は「会員選考の際に、ジェンダー、地域、所属、分野、年齢の多様化を図ってきた成果」としている。
 首相は代表質問の答弁で、会員の選考は「私が判断した」とも語った。ただ、首相はこれまで朝日新聞などのインタビューで6人を除外する前の105人分の 推薦名簿は「見ていない」と述べている。枝野氏は代表質問後、「全員の名前の載った名簿は見ていないにもかかわらず、『バランスをとって自分が判断した』 という支離滅裂の答弁を堂々とした。これだけでも辞職ものだ」と、首相を糾弾した。
 6人の任命除外について具体的に語らず、学術会議の全体像には能弁な首相。政府・与党は、その姿勢に呼応するように会議の見直しの動きを進める。
 井上信治・科学技術担当相はこの日午前、河野太郎行政改革相と会談。学術会議事務局の定員や予算の観点から行政改革の対象とする河野氏と緊密に連携して いく考えを伝えた。井上氏は同日夕には、学術会議のあり方を議論している自民党PT(プロジェクトチーム)座長の塩谷立・元文部科学相とも面会。同PTは この日も党本部で会合を開き、事務局などから学術会議の実態について聴取した。年内に提言を政府に提出する方針だ。
 塩谷氏は会合後、記者団から学術会議のあり方について、結論が現状維持となる可能性について問われ、「それはない」と否定。そのうえで「政策決定に貢献してもらうようなあり方を追求したい」と述べた。(小泉浩樹、石井潤一郎、石倉徹也)ーーー



2020年10月27日
今日も雲ひとつない好天、紅葉の六甲カトリックの横を下り阪急芦屋川から高座の滝を経てロックガーデンにあがる。天気のせいか人出もあり、いつものテラスに行くと麓に写真スタジオの車が止まっていたが何やら撮影の最中。新iphon用ケースの宣伝らしい。
 弁当を食べ終わると撮影隊も撤収、久しぶりに風ふき岩まで岩場と稜線を登る。1年ぶりの風吹き岩は一部崩落していて、猫が毛繕いの最中。一休みして道を 下り大阪方面から神戸市街に風景が変わるなか保久良神社の梅林を抜けて岡本に着く。のぼり下りと休憩いずれも1時間ほど。jrで六甲道に戻り半年ぶりにそ ちらの灘温泉につかり、食材買って4時過ぎには帰宅。東のほうに月がよく見える。


2020年10月26日
「安倍さんは毎年8月に広島や長崎に行くけど、書いたものを読むだけ。被爆者代表と会っても自分の言いたいことを話すだけ。被爆者の心を理解するとか、一国のリーダーとして被爆者の気持ちを海外で代弁する責任感は全然ないと思う」
「「唯一の戦争被爆国」とか「核廃絶の先頭に」というようなことを国連でもお話しされていましたけど、言っているだけ。非核三原則で自分は持たないけど、人様の核兵器に100%も200%も依存している」
「軍事的な用語として抑止力という言葉を使うけど、核抑止力は、何十万、何百万の人間の命を無差別に焼いたり殺したりしてもいいということを前提にしてい る。自分たちの身を守るため、相手を抑止するためより強力なものを持つ。互いにどんどん莫大(ばくだい)なカネを使って無駄遣いをしている」
「(オバマ前米大統領が検討していた核の先制不使用政策について、安倍首相が反対姿勢を示したことに)こちらで反核運動に関わる人たちはみんなあぜんとし た。いったい日本の核政策って何なんだって。被爆者たちや日本の多くの人が望んでいることと全然反対じゃないですか。我々の気持ちをちっともわかっていな い。怒り狂いますね」
「被爆者の言っていることの根底にあるものは何かを理解してほしい。なぜ被爆者が、二度とこういうことが人間に起きてはいけないという思いに到達したか。生き残った者が、なぜこうやって訴え続けるのか。
 何十万の人たちの死を意味のないものにしたくない。どの人間にも、そういう犯罪は絶対に許されない。われわれが経験したことは人間が経験することじゃない」
「あまりに米国の核の傘に依存して、問題があればすぐ米国の方を向いて解決してもらう。なぜ日本は自分たちの力で北朝鮮とか中国と関係を築き上げることができないんだろう」
「日本政府は、お金を出して若い人を海外に行かせ、どれだけ日本が平和を望んでいるか発表させたりする。けど大人の言葉で、被爆者の気持ちが理解できる者として「こう思うんだ」と堂々と言ってくれない。なぜ我々や若者を使うのかしら」
「広島へ世界のお偉い方を呼び込むのはいいこと。だけど楽ですよね、来てもらえば済むんだから。自分たちの信念を声を大にして伝える責任感がもう少しあってもいい。自分たちでロンドンでもニューヨークでも出かけていって話してほしい。若者や被爆者に依存するんじゃなくて」
「新しい首相には、もっと腰を低くし、お互いの目と目が合うような姿勢で近隣諸国と接し、信頼感を築いてほしい。米国に依存せずに自力で新しい関係を築く努力をしてほしい。
 独立した判断力のあるリーダーシップを期待します。道徳的、政治的な、本当の意味でのリーダーシップ。日本が変われば、世界が変わるんです」

 24日ホンジェラスの批准により核兵器禁止条約の批准国・地域が50ヶ国となり来年1月22日の発効が定まったことに対するサーロー節子さんのインタビュー記事から。
 核兵器そのものの非人道性とその開発・所有を正当化する核抑止力論の反道徳性、そして口では「核廃絶」を言いながら大量核保有国である米国の「核の傘」 に依存し、核兵器禁止条約にはその国連における議論にさえ後ろ向きな「唯一の戦争被爆国」日本の安倍政権の出鱈目ぶりが深い憤りと共に指摘されている。
 政治家として、或いは一人の大人として核兵器の非人道性とその削減・廃絶の必要性をみずからの言葉で語るのではなく、被曝者や若者にそれらを語らせて自らは核超大国の「抑止力」に依存して世渡りをするという欺瞞。
 今日ようやく開催された国会での首相の所信表明演説でひたすら原稿を読み上げて(「貧困対策」を「貧困世帯」、「重点化」を「原点化」などと読み間違い も多く)述べられたのは「行政のデジタル化」「不妊治療の保険適用」「携帯電話料金の引き下げ」などで、一昨日発効が定まったこの条約についての言葉も 「核軍縮」もまったくない。サーローさんの言う「道徳的、政治的な、本当の意味でのリーダーシップ」がまったく期待できない政権が登場したこの国。それを 変えていく責任は私たち国民にある。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/64308
https://www.tokyo-np.co.jp/article/64356
《核兵器禁止条約の批准国・地域が、発効に必要な50に達した。ただ、その中に日本は名を連ねていない。原爆の惨禍の体験者として世界各国で証言を続けて きたカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(88)は憤る。「唯一の戦争被爆国」と自ら名乗る国が、それでよいのですか。
    ◇
 新しい条約、跳び上がるほど喜んでいます。ここまですごいスピードで進んできた。びっくりしました。
 《サーローさんは、核兵器禁止条約採択への推進役となったNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の若者たちと連帯し、200近い国のリーダーたちに、条約への批准を求める手紙を書いてきた。》
 ヒロシマ・デー(8月6日)に批准したナイジェリアの外交官から素晴らしい返事がジュネーブのICANに来たらしいの。私の手紙が届いて、すぐさま大統領に見せたと。そんなことが他の国でもあったみたいで。一つでもそういう国があったと聞くとうれしい。
 2月、ICANのメンバーとスペインにいったとき、そのうちの1人が国連との調整をしてきたニューヨークに住む弁護士で、「ちょっと飛んでマルタに行 く。話をまとめてきたい」と。そしたら先日、(45カ国目の批准国)マルタがやってくれましたね。色んなメンバーが国々をサポートした。
 《6月には当時の安倍晋三首相にも手紙を書いた。「条約への署名・批准に向かって取り組むと宣言すれば、あなたが遺(のこ)した最大のレガシーとして日本と世界の歴史に刻まれる」と求めた。だが、日本は批准しない。》
いったい日本の核政策って何なんだ
 失望どころじゃない。条約交渉会議が始まった時に日本の大使が出席しないと言ったので、「我々は裏切られ、見捨てられた」と話した。もっと日本政府の支えがあると思っていた。でも実際は反対ばっかり。
 安倍さんは毎年8月に広島や長崎に行くけど、書いたものを読むだけ。被爆者代表と会っても自分の言いたいことを話すだけ。被爆者の心を理解するとか、一国のリーダーとして被爆者の気持ちを海外で代弁する責任感は全然ないと思う。ーーー



2020年10月25日
日記がわりに。
 久しぶりに週末続けて晴天、昨日はil ventoに開店と同時に入るとしばらくして家族連れなどで満席。じゃがいも主体のパターテもやはり美味。入り口横にテラスにちょうどいいスペースもある。三宮に出てテラス席で一休みし、食材買って帰宅。
 昨日寝室前のベランダの朽ちてきた木製椅子も有り合わせの濃い緑のペンキで塗ってみて、コントラストでリビング前に置いた。今日は2年ぶりにミニサイク ルで王子公園を通り灘区の海岸沿いに下り、岸壁ぞいをメリケンパークまで。初めてドック沿いのレストランTOOTHTOOTH FISH IN THE FORESTのテラスで地場のボンゴレをいただく。公園で小一時間過ごして来た道を戻り、HATのなぎさの湯につかってそのまま海沿いを東進、途中スー パーで牛乳など買い、後はひたすら都賀川と六甲川ぞいを漕いで押して帰宅、流石にバテた。今宵も夕景は澄み渡る。
 


2020年10月18日
「理由を説明しないのは大きな問題。任命権者である菅義偉首相が自ら、明確な説明をするのが基本ではないか。理由なく拒否することが行われれば、例えば文部科学大臣による国立大の大学長の任命などにも拒否権が拡大解釈されていきかねず、危険だ」
「科学は国民のためのもので、自由に研究をやってもらうことが大切だ。今年のノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術の女性科学者も、予想もしないことか ら、そこにたどり着いている。僕らが発見した物質も同じ。一つの方向へ、国が命令するということでは新しい発見は出てこない。任命拒否のように政府が頭か ら、これはダメあれはダメと言うのは問題だ」
「「国から学術会議に10億円も予算が出ている」と、いかにも大金のように言うが、10億円ほどで国の将来を見据えた科学技術の提言を出してもらうのは乱 暴ですらある。あまりに安い。もっと優遇されてしかるべきだ。会員らに支払われるのは交通費、宿泊費と、わずかな手当だ。組織、資金を、今以上に切り詰め ることはできないはずだ。そうなれば、解体になりかねない」
「行革の理由に「過去10年、学術会議から勧告が出ていない」と挙げた人がいたが、諮問されなければ勧告もできない。10年も勧告がなかったのは、政府が科学者の助言を求めなかったということだ。むしろ、その方が大きな問題だ」
「米国や英国には政府への科学アドバイザーがおり、科学者が国に科学的見解、知識を発信するチャンネルは明確になっている。これが日本にはない。だから新型コロナウイルス対策もふらふらしている」
「私も学術会議の会員を務めたが、会議で提言をしたとしても、ほとんど政府に受け止められた実感はなかった。今回の問題の本質は、政府が科学者の集団から、アドバイスをきちんと受ける仕組みをつくれるかどうかだ」

 菅首相による日本学術会議の任命拒否にたいするノーベル医学生理学賞受賞の本庶佑・京都大特別教授による批判。
 科学者からの言葉に耳を傾けずその提言を求めることすらせず独善的な施策にこだわり続けこの国を衰退させる政治に対する、事実と論理性の他になんらの忖度も阿りもしない優れた研究者らしい率直な提言でもある。
 学術会議には僅か10億円だが、自民党への政党交付金は172億6千万円、「Go To」事務委託費は3000億円。政府は内閣府など中央省庁から出向の常勤職員約50人の4億円超に上る人件費の縮減を検討中?
https://this.kiji.is/692343287156720737
 まず自らの政党交付金にメスを入れ、各省庁や官邸に出向した官僚が作った答弁書を丸読みする国会答弁や記者会見のあり方を検証してはどうか。何から何までやることが真逆の政府。根底から変革しなければこの国に真っ当な未来はない。

《政府による日本学術会議の任命拒否問題について、同会議の元会員で2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授(78)が本紙の 電話インタビューで、「理由なく拒否することが行われれば危険だ」と話し、任命権者である菅義偉首相の説明が必要との認識を示した。(勝間田秀樹)
◆理由なき拒否、拡大解釈の恐れ
 ―任命拒否をどう感じたか。
 理由を説明しないのは大きな問題。任命権者である菅義偉首相が自ら、明確な説明をするのが基本ではないか。理由なく拒否することが行われれば、例えば文部科学大臣による国立大の大学長の任命などにも拒否権が拡大解釈されていきかねず、危険だ。
 科学は国民のためのもので、自由に研究をやってもらうことが大切だ。今年のノーベル化学賞を受賞したゲノム編集技術の女性科学者も、予想もしないことか ら、そこにたどり着いている。僕らが発見した物質も同じ。一つの方向へ、国が命令するということでは新しい発見は出てこない。任命拒否のように政府が頭か ら、これはダメあれはダメと言うのは問題だ。
 ―学術会議のあり方について検証が始まった。
 「国から学術会議に10億円も予算が出ている」と、いかにも大金のように言うが、10億円ほどで国の将来を見据えた科学技術の提言を出してもらうのは乱 暴ですらある。あまりに安い。もっと優遇されてしかるべきだ。会員らに支払われるのは交通費、宿泊費と、わずかな手当だ。組織、資金を、今以上に切り詰め ることはできないはずだ。そうなれば、解体になりかねない。
◆政府が科学者の助言受ける仕組みを
 行革の理由に「過去10年、学術会議から勧告が出ていない」と挙げた人がいたが、諮問されなければ勧告もできない。10年も勧告がなかったのは、政府が科学者の助言を求めなかったということだ。むしろ、その方が大きな問題だ。
 ―議論はどうあるべきか。
 米国や英国には政府への科学アドバイザーがおり、科学者が国に科学的見解、知識を発信するチャンネルは明確になっている。これが日本にはない。だから新型コロナウイルス対策もふらふらしている。
 私も学術会議の会員を務めたが、会議で提言をしたとしても、ほとんど政府に受け止められた実感はなかった。今回の問題の本質は、政府が科学者の集団から、アドバイスをきちんと受ける仕組みをつくれるかどうかだ。
本庶佑氏(ほんじょ・たすく) 1942年生まれ。京都大医学部を卒業し、84年に同大医学部教授、2017年から特別教授。免疫の働きに関与するタンパ ク質を発見してがん治療薬オプジーボを開発し、がんの新しい治療を切り開いたとして18年にノーベル医学生理学賞を受賞した。》



2020年10月18日
日記がわりに。
 昨日は終日雨で今年いちばんの寒さだが今日は雨あがる。久しぶりに森隈のfamigliaに行きトマトとアンチョビのマリナーラをいただく。
 これも久しぶりにハーバーランドに寄ると人出が増えてやはりアンパンマン館にいくのか家族連れも多い。幼児が元気に走り回っている。船形ラックを購入した雑貨のお店はやはり先月閉店。 
 ドックと反対側のテラス席でコーヒータイム、ガラス工芸の店先で小瓶を買い、秋らしい青空と雲の下コンサートやライブも復活したドック沿いを歩いて三宮から帰宅。欧州は大変なことになっているがコロナ感染はこちらは日常が戻りつつありこのまま落ち着くのだろうか。

 


2020年10月18日
〈コロナ禍で世の中がざわつくなか、生後間もない赤ちゃんとふたりきり。「高くて紙おむつも買われへんかった」と振り返る。毎日の食事のおかずは具のない みそ汁。妊娠して57キロあった体重は、40キロにまで落ちた。《ひとり親 ご飯ない》。スマホで検索して支援団体を探した〉
〈開始10分前。電柱の陰に、きょうだいが待機している姿が見えた。「いいよー」と声をかけると、子どもたちは弁当を受け取り、言葉を交わさず立ち去っ た。他にも数人がさりげなく来て、スーッと帰って行く。「子ども食堂では貧困は見えないし、踏み込みにくい。普段の取り組みでは抱かない感情がわき上がっ てきた。大変な家庭があることを体感した」〉

 コロナ禍による解雇や雇い止めで日常の食事にも困窮するひとり親世帯と、表面では見えにくい貧困が拡散する現状を取材した記事。文章も写真もいい。
 ここに登場する「自分の人生を生きたい」と言って女性を置き去りにして去っていった男というのは、家業を継ぐことを拒み上京して横浜市議から国会議員と なって「地方優遇を打破」などと主張し、内閣官房長官となるとふるさと納税を唱えて「地方重視」に転換、首相に就任すると真っ先に政権批判する学者を学術 会議から排除したこの国の現首相を連想させる。
 非常事態宣言は解除されても観光や飲食だけではない、子供を育てるひとり親をはじめとしてこの国の広範なひとびとの生業が今も圧迫されている。しかしこの国の首相は組閣翌日厚労大臣にコロナ禍への対策の徹底ではなく、不妊治療の助成制度の大幅拡充を指示。
https://digital.asahi.com/articles/ASN9K6RL2N9KUTFL00P.html
 不妊治療などより、今現に困難に直面している子供と親に手を差し伸べるのが先だろう。森友・加計、桜など政治の私物化や不法行為で逮捕された閣僚らの任命責任を全く取らなかった者の内閣はこの国をますます衰退させるだけ。
https://digital.asahi.com/art.../ASNBF61JQN9SPIHB037.html...

《大阪府内の住宅密集地の一角で、母親になったばかりの19歳の女性が一人で赤ちゃんを育てている。1LDKのアパートの一室。つかまり立ちができるよう になった子どもの成長はうれしいが、新型コロナウイルスの影響で勤め先の業績が悪化し、育児休暇から職場に戻れる見通しが立たなくなった。「復帰は無理」 と伝えられたという。
 男の子を出産したのは今年3月。新型コロナが日本で猛威を振るい始めたころだ。頼れる身内はおらず、子どもの父親にあたる男性は、妊娠を知ると女性のも とを去った。貯金から出産や引っ越しの費用を支払うと、手元に残ったのは2万円。育休中で収入が減り、子育ての出費や家賃で家計が回らなくなった。
 コロナ禍で世の中がざわつくなか、生後間もない赤ちゃんとふたりきり。「高くて紙おむつも買われへんかった」と振り返る。毎日の食事のおかずは具のない みそ汁。妊娠して57キロあった体重は、40キロにまで落ちた。《ひとり親 ご飯ない》。スマホで検索して支援団体を探した。
 知り合いに窮状を訴えると、「自分で選んで産んだんやろ」と逆に責められることもあった。子どもの命を守りたい――。役所でひとり親への手当を申請する書類に精いっぱいの思いをそう記した。「ほんまに助けてほしかったんです」
 女性は親から虐待を受け、児童養護施設で育った。高校には進学せず、事務補助などの仕事をしていた時に妊娠した。子どもの父親にあたる男性は「自分の人生を生きたい」と、子の認知をしなかった。「あなただけがしんどいんじゃない、と言われるのが一番つらかった」という。
 5月、窮状に気付いた知人に買ってもらった食材で、サケのかす汁を作った。《白米以外のもの、1カ月ぶり》。お礼にそんなメッセージを送った。
 国内のひとり親は、厚生労働省の推計で約142万世帯。母子世帯では8割以上の母親が働いているが、平均就労収入は200万円だ。
食べ物がない人「珍しくなくなった」
 女性は今、月8万円弱の育児休業給付金などで生活をつないでいる。来年2月末には切れるため、児童手当や支援団体の寄付が頼りだ。「できへんから助けて、と頼むのはダメな母親なのかな。仕事見つけて頑張るしかないです」
 兵庫県明石市で子ども食堂を運営する「こどもサポート財団」の小谷くにこ事務局長は「新型コロナの影響で食べ物の支援を必要とする人が確実に増えた」と感じている。
 5月から持ち帰り弁当を無料で配り始めたところ、ひとり親世帯などを中心に以前とは違う家庭からも申し込みが来るようになった。小谷さんは「経済的困窮は見えにくいが、新型コロナによって最低限の食事に事欠く人が珍しくないことが見えてきた」と話す。
 一斉休校から春休みへなだれ込んだ後の3月27日、東京都世田谷区で子ども食堂を運営する「北沢おせっかいクラブ」の代表の斎藤淳子さんは心がざわついた。
 都の補助を受け、新型コロナの影響で生活が困窮している家庭の子どもたちに駅前で無料弁当を配ることにした。対象になりそうな家庭には区からお知らせを回してもらったが、本当に来るのか半信半疑だった。
 開始10分前。電柱の陰に、きょうだいが待機している姿が見えた。「いいよー」と声をかけると、子どもたちは弁当を受け取り、言葉を交わさず立ち去っ た。他にも数人がさりげなく来て、スーッと帰って行く。「子ども食堂では貧困は見えないし、踏み込みにくい。普段の取り組みでは抱かない感情がわき上がっ てきた。大変な家庭があることを体感した」
 長期化を見据え、区内の子育て支援団体の代表らと連絡をとりあい、4月14日から困窮家庭の子どもに、弁当を無料で渡す活動をはじめた。今も民間の助成 金や寄付をもとに区内4カ所で隔週で開催し、米や野菜を配布する。これまで200世帯400人に5300食以上提供した。ーーー



2020年10月15日
「長年、公費を費やし行政機関として位置付けられている」「国民の立場から見て、会議のあるべき形を客観的に未来志向で議論する」自民党下村政務調査会長
 学習塾運営から議員となり学校の歴史教育を「自虐史観」と揶揄する偏狭さゆえに安倍内閣が文科大臣としたが、学習塾団体や外国籍企業そして反社会勢力か らの献金という政治資金規正法に関する疑惑にまみれた人物が与党政調会長として、任命拒否の違法性から問題をすり替えて日本学術会議のあり方を検討すると いう悪い冗談のようなこの国の主要政党の現状。
 8年に及ぶ安倍政権の政治の私物化と大臣や議員の汚職や辞任という事態になんら組織的な検証をせず、内部から批判の声をあげる議員は絶滅危惧種のように 激減して、自らの地位と既得権に執着し現実の課題にも過去の歴史にも真摯に向き合えない現在の自民党の多数を占めるこれらの者たちに作り出せる「未来」な どない。
 学術会議の年間予算は事務局経費6億を含めてわずか10億、いっぽう自民党の政党交付金は今年度172億6136万円と17倍。
https://mainichi.jp/.../arti.../20200401/k00/00m/010/349000c
 議員歳費とは別にこれだけの額の国の予算を自民党は一体何に使っているのか。河井夫妻が贈賄容疑で逮捕された昨年の参院選で買収の原資となったのは党が交付した1億5000万の破格の選挙資金であり、そのうち1億2000万円は政党交付金が使われた。
https://mainichi.jp/articles/20200702/k00/00m/040/180000c
 自民党には日本学術会議の予算や組織の検証をする資格はまったくない。まず森友・加計、桜そしてIR担当副大臣の中国企業からの収賄と河井夫妻の公選法 違反とその原資となった政党交付金の使い方など、自らの政権の様々な疑惑や不祥事と組織のあり方こそ、総合的・俯瞰的に徹底してメスを入れたらどうか。そ れができないなら即座に野に下ることだけがこの者たちの唯一の道だろう。

《「日本学術会議」をめぐり、自民党は、「会議」のあり方を検討し直す作業チームの初会合を開き、政府からの独立性や、会員数の規模などについて議論を進め、年内をめどに方針をまとめることを確認しました。
「日本学術会議」が推薦した会員候補6人が任命されなかったことを受けて、自民党は14日、党本部で「会議」のあり方を検討し直す作業チームの初会合を開きました。
会合の冒頭、下村政務調査会長は「国民の立場から見て、会議のあるべき形を客観的に未来志向で議論することが重要だ。年内をめどに方針をまとめ、政府に提出したい」と述べました。
また、作業チームの座長に就任した塩谷・元文部科学大臣は「日本学術会議は、行政や国民生活に科学を反映させるなどの目的で設置されているが、残念ながら役割が機能しているか疑問がある。『政策のための科学』という考え方に基づき、精力的に議論したい」と述べました。
このあと「会議」のあり方などについて議論が行われ、出席者からは「『会議』の提言や答申を政策に生かした例がどれだけあるのかなど、役割が果たされてい るのか検証すべきだ」という意見や、「会員が特別職の国家公務員という立場でいいのか、欧米各国の組織の例なども踏まえ、あり方を検討すべきだ」といった 指摘が出されました。
そして、作業チームでは「会議」の会員からヒアリングを行うなどして、政府からの独立性や、会員数の規模をはじめ、大学での研究を安全保障政策に生かすための方策などについて議論を進め、年内をめどに方針をまとめることを確認しました。
会合のあと、塩谷氏は記者団に対し「会議のあり方をまず考え、その中で会員の選出方法がどうあるべきかも考えていきたい」と述べました。》



2020年10月15日
日記がわりに。
 ようやく秋晴れの日が続く。一昨日は灘区西となりの海岸沿い神戸HATに温泉があると遅ればせながら気づく。阪急王子公園で降り、南へ道をjr灘駅と阪 神岩屋を超えて歩き、美術館もある広いスペースの一画「人と防災未来センター」の公設らしく廉価なレストランでお昼を食べる。公園で遠足の小学生がやはり お昼時だった。隣のJAICAの人に道を訪ねて海沿いのなぎさの湯を見つけて初めて入る。露天と薄茶色の湯が心地よい。阪神で数駅戻り、六甲道で食材買っ て帰宅。
 今日は坂を降りてPizza Trackでオルトナーラを買い、坂を歩いて摩耶ケーブルを過ぎて山道を上り展望台で大阪から神戸まで一望。持ち込んだ野菜とビール、ワインでお昼を食 べ、桜道を下り久しぶりに五毛神社と横の海蔵寺を見てさらに坂を降りて水道筋の手前の灘中央市場を訪ねる。珈琲店で100円コーヒーをいただき市場のフ リースペースで飲みこれも久しぶりに灘温泉水道筋店に入る。帰路は六甲川沿いを歩いて帰宅。地元で散歩も悪くない。
 


2020年10月14日
「(任命拒否は)明らかな違法行為。学問の自由を侵害し、思想表現の自由の抑圧につながりかねない」日本学術会議元会長広渡清吾・東大名誉教授ら計58人の声明
「菅首相がこんな乱暴なことをしたということは歴史上長く糾弾されるだろう。戦争の反省の上に作られた日本学術会議に汚点を残すものだ」益川敏英・京都大名誉教授
「学問への萎縮効果を生み看過できない。政府に言いなりになる学者ばかりが育つ社会は発展しない」浅倉むつ子・早稲田大名誉教授(法学)
「アカデミーに政権が関与することは学術的な発信力を損なう大きな問題で、長期的に日本全体の国益を損なう」内田樹・神戸女学院大名誉教授
「選挙で選ばれた権力者であっても、法に定められた手順を踏まないといけない。理由も説明しない現状を放置すれば、不透明な差別の温床につながり、入試や就職など民間にも影響が及びかねない」小熊英二・慶応大教授(歴史社会学)

 菅首相が任命を拒否した6人の研究者全員が呼びかけ人や賛同者となっている「安全保障関連法に反対する学者の会」の14日の記者会見から。
 近縁者への利益誘導や行き当たりばったりの施策で政治を私物化し、総合的・普遍的・俯瞰的な観点からの思考や政策立案がまったくできないのはこの政権と 与党に他ならない。安倍・菅2人のまともに勉学しなかった首相と、暗記力は優れても論理的考察はできないその取り巻き官僚および政権の様々な違法行為と不 祥事に目をつぶる既得権益まみれの与党議員らがこの国の道義も未来も潰す。

《「安全保障関連法に反対する学者の会」が14日、東京都内で記者会見を開き、日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかったことに抗 議し、理由の開示と撤回を求める声明を発表した。会の呼びかけ人の一人で、2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都大名誉教授は「菅首相が こんな乱暴なことをしたということは歴史上長く糾弾されるだろう。戦争の反省の上に作られた日本学術会議に汚点を残すものだ」と批判するメッセージを寄せ た。
 会には、菅首相が任命を拒否した宇野重規・東京大教授ら6人全員が呼びかけ人や賛同者として名を連ねている。6人や益川氏は会見に参加しなかった。
 声明は、日本学術会議元会長の広渡清吾・東大名誉教授ら、任命拒否された6人以外の計58人が連名で出した。日本学術会議法は戦前・戦中の国家による学 問思想統制の反省によって政府からの独立性をうたい、首相の任命権を制約しているとして「明らかな違法行為」と批判。「学問の自由を侵害し、思想表現の自 由の抑圧につながりかねない」と訴えた。
 会見で浅倉むつ子・早稲田大名誉教授(法学)は「学問への萎縮効果を生み看過できない。政府に言いなりになる学者ばかりが育つ社会は発展しない」と指 摘。学術会議では幾重にもわたる手続きで会員を選考しているとして「無謀な暴挙だ」と批判した。思想家の内田樹・神戸女学院大名誉教授も「アカデミーに政 権が関与することは学術的な発信力を損なう大きな問題で、長期的に日本全体の国益を損なう」と話した。
 小熊英二・慶応大教授(歴史社会学)は「選挙で選ばれた権力者であっても、法に定められた手順を踏まないといけない。理由も説明しない現状を放置すれば、不透明な差別の温床につながり、入試や就職など民間にも影響が及びかねない」と危機感を示した。
 会によると、14日までに国内約350の学会が抗議声明などを出しているという。【岩崎歩】》



2020年10月13日
〈政府の事務方トップである杉田副長官が首相の決裁前に推薦リストから外す6人を選別。報告を受けた首相も名前を確認。〉
「(退任する)会員が後任を指名することが可能な仕組みだ。推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲して良いのか考えた」5日菅「インタビュー」
「最終的に決裁を行ったのは9月28日。会員候補のリストを拝見したのはその直前。(決裁する直前に会員候補のリストを見た段階で99人で、推薦段階の105人の名簿については)見ていない」9日菅「インタビュー」
「任命できない候補者がいる(との趣旨を事前に首相に説明)」杉田副長官
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14657107.html...
「政権を批判するような人物を入れては困る」(文科省の分科会人事で)杉田副長官  https://digital.asahi.com/articles/DA3S14657108.html...

 永く警察官僚で内閣官房内閣情報調査室長、内閣情報官、内閣危機管理監などを歴任し、第二次安倍政権で内閣官房副長官兼内閣人事局長そして菅政権でも内閣官房副長官兼内閣人事局長である人物による日本学術会議会員推薦者6人の任命排除への関与。
 この「官邸ポリス」と揶揄される人物は、かつて加計学園問題で「総理のご意向」文書を文科省のものと指摘した前川事務次官について出会い系バー通いを「注意」し、菅官房長官の「教育行政のトップが出会い系バーに行ったことに違和感を感じる」発言に繋げた人物。
 その後任の北村滋内閣情報調査官は安倍元首相と親しい山口元TBS記者のレイプ事件でその揉み消しを行ったと推定される人物。さらに和泉洋人首相補佐官 は例の「総理のご意向」発言などにより文科省に加計学園の新学部開設許可を強要し、さらに大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官とのコネクティングルーム宿泊 問題で「公費不倫出張」疑惑の渦中となった人物。この三名は安倍内閣から菅内閣へ、北村滋内閣情報調査官は国家安全保障局長となった以外はそのまま留任し ている。
https://mainichi.jp/articles/20200916/k00/00m/010/291000c
 内閣人事局創設により官僚の人事権を一手に握った安倍政権における「情報調査」と「安全保障」なるものの本質は、公文書を改ざんまでして政治を私物化する政権の不祥事や醜聞の揉み消しによる政権自体の延命という矮小極まるものでしかない。
 その官僚人事を介した汚れた歪な手法が菅内閣に継承され、今回は日本学術会議というこの国の学問と知性を守り発展させる領域にその薄汚れた手をかけたということ。
 日本学術会議法第六条「第十七条の規定による推薦に基づいて 、内閣総理大臣が任命する」からは、政権に批判的な研究者を排除できるという解釈は成立し得ない。しかしその事務作業を官房副長官に委ねて6名の研究者を 排除し、任命を拒否する。これほど無恥に驕り高ぶる政権はこの国を学術や知性の分野でも間違いなく凋落させるだろう。
「国民および国会の責任に負えないような場合にまで任命する義務はない」は、参院選で買収資金を配りまくるものを法務大臣に任命したり、中国企業から買収される人物をIR担当副大臣に任命した安倍前首相とその官房長官の責任を果たしてから言うべきだ。

《日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が任命されなかった問題で、菅義偉首相がこの6人の名前と選考から漏れた事実を事前に把握していたこ とが分かった。除外の判断に杉田和博官房副長官が関与していたことも判明した。関係者が12日、明らかにした。<下へ続く>
 首相は9日のインタビューで、会議側が提出した105人の推薦リストを「見ていない」と発言。99人のリストを見ただけだとして6人の排除に具体的に関 与しなかったかのような説明をしたため、一連の経緯や理由、誰が判断したのかが焦点となっていた。首相が6人の除外を前もって知っていたプロセスが明らか になったことで、さらなる説明責任が求められる。
官房副長官に側近坂井氏 補佐官は阿達氏ら―菅首相
 今回の人事を首相が最終的に決裁したのは9月28日。関係者によると、政府の事務方トップである杉田副長官が首相の決裁前に推薦リストから外す6人を選 別。報告を受けた首相も名前を確認した。首相は105人の一覧表そのものは見ていないものの、排除に対する「首相の考えは固かった」という。ーーー



2020年10月11日
日記がわりに。
先月27日今年限りで営業を辞めると決めた東急ハンズ三宮店を未練がてら見たあと生田神社も訪ね久しぶりにquartoのテラスでナスとアンチョビのピザ。大丸手前の通りでは花に寄ってた綺麗な蝶が風で飛ばされた。
10年前職場に持ち込んで使用していたMac、HDDが壊れて起動しなかったが、この巣篭もり期間廉価になった外付けSSDで復活した。動作はやはり遅いがデザインは今見てもいい。月末初めて寄った岡本の牛の店でカルビ丼を食べ、本山駅前でバジル買ってやはりうはらの湯。
1日夜は晴れてこのところ珍しく中秋の名月。3日はまた曇天で昼にil ventoのあと三宮に出ると皮剥あり。翌日午前春に延期となった篠原台の草取りの日で、小一時間汗をかき、昼は本町nomadikaテラスで前回知った 玉ねぎピザ。生地の薄いローマ風でこれもお美味しい。
7日は快晴、住吉小を過ぎてまたうはらの湯。週後半から台風が太平洋岸を通りこちらも風雨。
ようやく風雨は去ったが、自身も遅ればせながらようやく今年は10月にスポーツの日と三連休がないのに気付く。9月の金沢ジャズフェスもなく10月の北の 国への旅も諦め、今日は地元calmoでピザのあと三宮。大丸横から旧居留地を歩くと、コロナ禍のためか婦人用服飾店が8月末で店を閉じていた。三宮が少 しずつ寂しくなっていく。
    


2020年10月 8日
「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲して良いのか」菅10月5日
「当初予算の予備費を活用する。これまでも合同葬についてはそうした予備費が活用されてきた」加藤9月28日
https://digital.asahi.com/articles/ASN9X6S37N9XUTFK00S.html
「これは、学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません」中曽根1983年5月12日参院文教委  https://kokkai.ndl.go.jp/...
「推薦の範囲の中で任命をしてきているが、これまでぴったり一致してきた。基本的考え方は一緒であって、たまたま対応の結果にずれがあるということ」加藤10月5日
https://digital.asahi.com/articles/ASNB571J7NB5ULFA023.html
「首相が任命について国民、国会に責任を負えるものでなければならないことからすれば、首相に推薦の通りに任命すべき義務があるとまでは言えない」6日政府が野党の会合で示した2018年11月13日付内閣府日本学術会議事務局作成文書
https://www.tokyo-np.co.jp/article/60126

 学術会議会員の任命は前例踏襲を遺棄するとして拒否するが、中曽根元首相の政府・自民の「合同葬」は1億9000万かけて「これまでも」「そうした」ように行う。どこが「前例踏襲打破」なのか。
 その中曽根元首相の83年国会における「政府が行うのは形式的任命にすぎません」との回答は、公選制から任命制への学術会議法改正審議でのもの。国権の 最高機関である国会における首相の回答は、改正法により学術会員を首相に推薦の通りに任命すべき義務があることを示している。
 国会に計ることもなく内閣府で勝手に解釈変更したからといって、首相がかつての法改正時の回答を捨てて恣意的に任命拒否して良いわけがない。菅首相と加藤官房長官らの一連の発言はどれも無残に破綻している。
  公選法違反で逮捕・起訴された河井克行議員の法相任命について、安倍首相も菅官房長官も、今に至るまでいかなる「責任」もとっていない。 「首相が任命について国民、国会に責任を負えるものでなければ」とは、安倍・菅政権の誰が言えるのか。安倍政権で閣僚の不祥事による辞任は数多い。まずそ れらの任命責任を取ってから、つまり辞職してからものを言うべきだろう。こういう輩は政治も道理も私物化し劣化させ、この国を衰退させるだけ。

《菅義偉首相は5日、首相官邸で内閣記者会のインタビューに応じ、日本学術会議の会員候補105人のうち6人の任命を拒否したことは適法との見解を重ねて 示した。その上で「(退任する)会員が後任を指名することが可能な仕組みだ。推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲して良いのか考えた」と説明し た。
 首相がこの問題で一定の時間を割いて説明するのは初めて。野党は反発を強めており、26日召集予定の臨時国会で厳しい追及を受けるのは確実だ。
 6人は安倍政権が進めた安全保障関連法や特定秘密保護法の制定に反対してきた。首相は6人の見解と任命拒否の判断は「全く関係ない」と断言。ただ、判断の具体的な理由については明らかにしなかった。「(憲法で保障される)学問の自由とは全く関係ない」とも明言した。
 また、「それぞれの時代の制度の中で法律に基づいて任命を行っているという考え方は変わっていない」と強調。関係法令に照らして問題はないとの認識を示した。
 さらに、過去の省庁再編論議の際に日本学術会議の必要性や在り方が議論されてきたと指摘。「(会議の)総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から今回の任命について判断した」とし、「今後も丁寧に説明していきたい」と述べた。》



2020年10月 8日
「菅義偉という人物の教養のレベルが露見した。『学問立国』である日本に泥を塗った行為。一刻も早く改められたい。政治家が学問に口を出してはいけない。 首相に任命権があるから行使したというのは、何も説明していないに等しい。理由を開示すべきだし、学問がなっていないという理由以外は認められない」

 極めて真っ当な指摘。
 莫大な国の予算を投じて地下をひたすら掘削して東京大阪間をわずか1時間ほど短縮するリニア工事に大井川水系問題から異議申し立てをする知事らしい。
 学者出身の川勝知事は今年8月朝日新聞静岡地方版に連載された「手記」で、
「(1)コロナ禍問題は「東京問題」であり、東京一極集中からICT(情報通信技術)を活用する地方への多極分散が望ましい。いまや「スーパー・メガリージョン(リニアが約1時間で結ぶ京浜・中京・阪神の7000万人巨大都市圏)」は必要ない」
「(3)リニアの電力源は原発を前提にしているが、福島第一原発事故などで原発依存モデルは崩壊した。リニアの莫大な電力源は確保できるのか?」
と見解を述べているという。
https://toyokeizai.net/articles/-/374441?page=3
 これも極めて真っ当な見解だろう。
 「行政の縦割り」「 既得権益」「あしき前例主義の打破」などと言い古された言葉を掲げて首相となったが、あいも変わらず陰湿な人事権を振るって省庁や検察、そして今回は学術 会議に介入して己の既得権益に固執する人物の教養のレベルでは、原発やリニアなど膨大な予算と巨大な環境負荷と過酷事故そして将来世代への莫大なつけの問 題は解決できない。
 政権に直言する優れた研究者を学術会議から排除する今回の任命拒否は、この国のいく末を出口のない迷路に落とし込む。直ちに撤回すべき。
https://digital.asahi.com/art.../ASNB761QMNB7UTPB00D.html...

《「日本学術会議」が推薦した会員候補105人のうち6人について、菅義偉首相が任命しなかった問題をめぐり、静岡県の川勝平太知事は7日の定例会見で、 「菅義偉という人物の教養のレベルが露見した。『学問立国』である日本に泥を塗った行為。一刻も早く改められたい」と強く反発した。
 川勝知事は早大の元教授(比較経済史)で、知事になる前は静岡文化芸術大の学長も務めた、いわゆる「学者知事」だ。
 川勝知事は6人が任命されなかったことを「極めておかしなこと」とし、文部科学相や副総理が任命拒否を止めなかったことも「残念で、見識が問われる」とした。
 美濃部事件、滝川事件など戦前の言論統制にも触れ、「政治家が学問に口を出してはいけない。首相に任命権があるから行使したというのは、何も説明してい ないに等しい。理由を開示すべきだし、学問がなっていないという理由以外は認められない」と批判した。(宮川純一、阿久沢悦子)》



2020年10月 7日
・日本の研究者全体を代表する組織(アカデミー)です。海外アカデミーとの国際交流協力や、国内諸学会の連携・協業の促進、新領域や研究者のあり方の調査 など多面的な活動をしています。「政府の諮問機関」と表現する報道もありましたが、違います。政府に報告・提言するためだけの機関ではありません。
・例えば総合科学技術・イノベーション会議は政府の諮問機関です。日本学術会議は科学をもっと広くとらえていて、政策立案だけでなく広く社会に対して発言し、助言します。
・日本学術会議で大きな意味を持つのは人文社会科学の分野です。「知」の扇子を開くとして、あでやかな扇面が自然科学・技術だとすると、人文社会科学は扇のかなめです。この二つが共同することで科学が暴走することなく正しい方向に進む、と考えられています。
――人文社会科学系の人たちばかり拒否された。
・そう。かなめの部分に位置する人たちです。特徴的ですね。かつて自民党には学術会議廃止論を言う方はいましたが、会員の選任に手を突っ込む首相は皆無で した。政治が学術を支配しようとすれば学術は滅ぶ、というのが世界の常識。表立ってそんなことをしたら世界中から軽蔑される。独裁者の国のアカデミーで も、別の口実でやってきたものです。
・「日本はそういう国だったのか」と各国のアカデミーは驚いているでしょう。日本に真の学術はないと首相自ら表明したような結果を生んでしまう。どんな国 でも「我が国の学術は独立している」と名誉にかけて言うのが普通です。内向きに平気でこういうことをやっていると、日本はどんどん落ち目になる。
――国際的にも注目されるでしょうか。
・そうなります。米国ではいまプリンストン大やコロンビア大の研究者らが「民主主義を擁護するために科学者は立ち上がるべきだ」と声をあげ、有力学者たちが署名しています。日本学術会議の問題は強い関心で眺められているでしょう。
――今後への懸念は大きい、と。
・「法に基づいて」と言ってしまうと、日本学術会議法に反し、営々と培われてきたその機能に背きます。学術会議が首相の下(もと)にある機関と強調すれ ば、世界中がガリレオ・ガリレイいじめのローマ教皇や、昔々の王立アカデミーを連想するでしょう。公人の公人たる政治の最高指導者に国をおとしめる過ちを 犯させてはなりません。学術会議がここで毅然(きぜん)としないと、日本も日本の学術も名誉を失することになると思います。

 日本のイスラム学を牽引し1994年から2003年まで日本学術会議会員、第1部(人文科学)の部長も務めた板垣雄三東大名誉教授のインタビュー。
 日本学術会議は政府の単なる諮問機関でも、ましてや御用機関でもない。いずれの民主的な国もそうであるように、古代アテネでプラトンが創設したアカデメ イアを範として、政治や宗教から独立して広範な学術分野を網羅し様々な分野の「知」の水準を高めて集合知とすることでその国だけではなくひろく人類の福祉 に貢献しようとする組織だ。
 中世ヨーロッパと戦前の日本やドイツそして現在の権威主義的独裁国家が、宗教や国家による「知」の支配と介入を長く続け、その迫害による犠牲と「知」の衰退が社会の停滞と劣化を生み、最終的にその社会を破局に導くということを忘れるべきではない。
 今回の6名はいずれも社会問題への意見表明も臆することなく行ってきた人文・社会系の優れた研究者であり、板垣氏が指摘するように科学のそして国家の暴 走を制御する扇のかなめのような存在である。安倍・菅政権は自らに批判的な意見を進言するこうした人びとを排除することで、日本学術会議を政府の下に置 き、政権の意のままに操ろうとしている。それはひいてはこの国の「知」の水準を低下させ、現代世界が直面する課題の解決策の実現を遠ざけ、人びとの暮らし と文化そして国際関係をも劣化させる愚かな道でしかない。

《日本学術会議が推薦した新会員候補のうち6人を菅義偉首相が除外したことに波紋が広がっている。2003年まで同会議の第1部(人文科学)の部長などを 務め、現行制度への改革にも関わった板垣雄三・東大名誉教授(歴史学)=諏訪市在住=は「6人の問題では全くない」と指摘する。何が問題なのか、板垣名誉 教授に聞いた。
学問への介入か 繰り返す慣例破り、問われる政権の姿勢
 ――板垣さんが日本学術会議の会員だったのは1994年からの9年間でした。日本学術会議とは。
 日本の研究者全体を代表する組織(アカデミー)です。海外アカデミーとの国際交流協力や、国内諸学会の連携・協業の促進、新領域や研究者のあり方の調査 など多面的な活動をしています。「政府の諮問機関」と表現する報道もありましたが、違います。政府に報告・提言するためだけの機関ではありません。
プリンストン大、コロンビア大からも反対署名
 ――諮問機関ではない?
 例えば総合科学技術・イノベーション会議は政府の諮問機関です。日本学術会議は科学をもっと広くとらえていて、政策立案だけでなく広く社会に対して発言し、助言します。
 ――学術会議は人文社会科学系の研究者も多い。
 日本学術会議で大きな意味を持つのは人文社会科学の分野です。「知」の扇子を開くとして、あでやかな扇面が自然科学・技術だとすると、人文社会科学は扇のかなめです。この二つが共同することで科学が暴走することなく正しい方向に進む、と考えられています。
会員わずか210人 「研究者の頂点」学術会議とは
 ――人文社会科学系の人たちばかり拒否された。
 そう。かなめの部分に位置する人たちです。特徴的ですね。かつて自民党には学術会議廃止論を言う方はいましたが、会員の選任に手を突っ込む首相は皆無で した。政治が学術を支配しようとすれば学術は滅ぶ、というのが世界の常識。表立ってそんなことをしたら世界中から軽蔑される。独裁者の国のアカデミーで も、別の口実でやってきたものです。
 ――今回、首相は「法に基づいて適切に対応した」と言っている。
 「日本はそういう国だったのか」と各国のアカデミーは驚いているでしょう。日本に真の学術はないと首相自ら表明したような結果を生んでしまう。どんな国 でも「我が国の学術は独立している」と名誉にかけて言うのが普通です。内向きに平気でこういうことをやっていると、日本はどんどん落ち目になる。
 ――国際的にも注目されるでしょうか。
 そうなります。米国ではいまプリンストン大やコロンビア大の研究者らが「民主主義を擁護するために科学者は立ち上がるべきだ」と声をあげ、有力学者たちが署名しています。日本学術会議の問題は強い関心で眺められているでしょう。ーーー



2020年10月 6日
・これまでさまざまな行政事件で当事者の方々を応援してきましたが、まさか自分が当事者になるとは考えていませんでした。専門家・研究者としての活動についての疑心暗鬼を、政権は持たせたいのでしょうか。
・私は15年と18年に辺野古の新基地建設に対して、行政法学者たちと政府の対応に抗議する声明を出しました。その時、賛同はするけど、名前を伏せる研究 者もいました。仕事への影響を心配していたのかもしれません。今回の任命拒否によって、研究者の活動が萎縮してしまうのではないかと懸念してしまいます。
・菅首相や加藤さんは、まったく法律を知らずに発言していますね。インチキにもほどがあります。日本学術会議法の条文を本当に読んでほしい。ーーー条文に 「会議は内閣総理大臣が所轄する」と書いてありますが、総理大臣に監督権はありません。法律の趣旨からいって、候補者を任命するかどうかについて事務を所 轄するだけの首相が判断できるわけがありません。加藤さんの「監督権がある」というのは、まったくの素人の考えです。
・日本国憲法6条は、天皇は国会の指名に基づいて、首相を任命するとしていますが、例えば菅さんは国会から指名があったけど、その段階で違う人に……とい うわけにはいきませんよね。この場合の「指名」は候補者名を挙げるという意味ですから、学術会議会員についての「推薦」と同じです。
・自分たちが「これが法律の解釈だ」と言い切れば、それでまかり通ると思っているんじゃないでしょうか。政権は官僚の人事を握り、周りはイエスマンばかり だから、外から何を言われても「その指摘は当たらない」「問題ない」と言ってしまう。そう繰り返していれば、そのうち国民にもあきれられて、忘れられる。 国会も強行採決で乗り切れる。こういう成功体験が、(森友学園、加計学園、桜を見る会などの問題を通じて)安倍政権から続いてきたわけです。世の中はこれ で通るんだという非常に恐ろしい感覚を政権は持ち、(中央省庁などの)行政はこういう政権に支配されているのです。
・(野党)ヒアリングに出席した内閣府などの職員は、政治家の口から出任せの言葉に合わせ、取り繕うのに必死でした。苦し紛れの説明を政治家が官僚にさせ ている状況は、見ていていたたまれなかったですね。安倍晋三前首相の答弁の口裏合わせのために文書の廃棄や改ざんをやらされた公務員と同じです。
・政権は職員を盾にしている。政権を維持するためには何をやってもいいという政治家の発想は、あまりにも残酷です。有能な方々が法律を破る手先になってしまっている。政権のやっていることは、職員に対する人権侵害だと思います。
・法律を守るべき当事者(内閣)が、法律に基づいて説明ができないことを無理やり行うことはあってはならない。それが世界中から見られてしまうという状況 は、日本全体にとって恥ずかしいことです。国を代表する人が正面から法律を破って何も感じていないことに、強い危機感を覚えます。
・地動説を唱えたガリレオ・ガリレイが権力から弾圧されたように、真理は時々の政府が決められることではない。ガリレオは、星の軌道や重力の中での物の動 きを解明しようとしましたが、イタリアではそうした学術活動ができなくなり、経済的にも没落し、その代わりに学術や経済の中心となっていったのが、ニュー トンのイギリスやライプニッツのドイツでした。菅政権が日本の宇宙の中心で、それに反する人を排除すれば、100年単位で考えると誤った方向にいってしま います。
・私は社会的責任感で審議会の委員などをしているので、反対意見は必要ないとして政権が排除するなら、それでも構いません。ただ、学術会議の活動や公的な 審議会などで政権とは異なる考えを示す専門家がいなくなれば、国民生活に影響が及びます。今回の問題による被害者は私たち6人ではなく、一般市民全体で す。
・社会に対する責任を果たすことに尽きると思います。学者は、社会からさまざまな援助を与えられ、研究する時間を与えられています。これは、個人のもうけ や出世のために与えられているのではなく、社会の将来をより良くするために与えられています。学者は、その意味で(炭鉱で有毒ガスに真っ先に反応して危険 を知らせる)カナリアともなり得ます。だからこそ、広く日本と世界の人々に分かってもらえる「声」で語らなければならないと思っています。

 菅政権に任命拒否された研究者の1人、岡田正則・早稲田大教授のインタビュー記事から。私もその末席に居た君が代強制処分撤回訴訟で原告側の証人として法廷で意見を述べた研究者らしい、静かな責任感に満ちた言葉が聞こえる。
 法学部出身でありながら憲法その他の法律を理解せず脱法行為を繰り返す安倍・菅政権への憤りと、そのもとでつじつま合わせと取り繕い果ては公文書改ざん まで強いられる官僚への同情、そして政権による人事と行政の私物化が政策と学術を歪め市民全体を被害者とするという洞察。先の私の投稿と同じく地動説に関 わるガリレオとニュートンに言及している見識の深さ。(自慢か?との声が、、)
「学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません」「政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされ ば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております」という1983年第98回国会参議院文教委員会における中曽根首相答弁は、従来 の公選制を学会からの推薦と首相による任命制に変更する日本学術会議法の改正に関する、その「任命」を担当する総理大臣としての解釈を述べたもので、それ に基づいて法改正が成立した。これは首相の「任命」行為に強い拘束力を持つ。もしこの解釈をときの政府の一存で恣意的に変更するなら、この日本学術会議法 改正自体が虚偽説明による改正として法的正当性を失う。
 昨日の菅首相「インタビュー」なるものでの「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか」「学問の自由とは全く関係ない」「法に基づい て、内閣法制局にも確認の上で推薦者の中から首相として任命した」との断言は、安全保障に関する歴代政権の憲法解釈を法制局長官を交代させて変更した悪し き「前例」からしても全く説得力がない。
 中曽根首相の「政府が行うのは形式的任命」との言葉は単に「前例」ではない。日本学術会議法改正部分の解釈について立法権を有する国会に対して行政府の 長が行った契約、約束に他ならない。これを反故にして研究不正など明確な理由もなく学術会議推薦者から首相が恣意的に任命拒否することは日本学術会議法を 逸脱する不法行為でしかない。岡田教授が言う「国を代表する人が正面から法律を破る」ことはいい加減やめさせなければこの国の衰退は止まらない。

《任命を拒否された「日本学術会議」新会員候補6人のうちの一人である岡田正則・早稲田大教授は、行政法研究者の立場から「首相や官房長官は、法律をまっ たく知らずに発言している」と厳しく指摘する。ゼミから多くの官僚を輩出してきた教育者として「有能な職員たちが、法律を破る手先にされている。見ていて いたたまれない」と語る岡田さんに、任命拒否の何が問題なのかを詳しく聞いた。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】
理不尽に廊下に立たされている気分
 ―−岡田さんは、10月3日に首相官邸前で行われた「任命拒否」に抗議する集会に参加し、マイクを握りました。どのような思いで参加したのですか。
 ◆10月1〜3日の日本学術会議の総会や委員会に、私は傍聴という形で出席しました。本来であれば分担すべき役割が担えませんでした。会員が少なくなれ ば、部会の運営自体も十分にできませんので、一刻も早く正常化する必要があります。集会には、正常化が必要だという思いをアピールしようと参加しました。 傍聴という形は、幼いころに学校で理不尽に廊下に立たされているような気分でした。なぜ私が授業を受けさせてもらえないのかと。ーーー



2020年10月 6日
・学術会議は1949年設立で、日本学術会議法は教育基本法や国立国会図書館法と並び、前文をもつ理念的で特別な法律です。その前文には「日本学術会議 は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩 に寄与することを使命とし、ここに設立される」とあります。
・日本学術会議法第3条に「独立して(中略)職務を行う」という言葉があります。これは「政府から独立して」という意味です。たとえ内閣府が所管する機関であろうとも、組織の独立性は担保されています。それは戦後一貫して変わりませんでした。
・三つの点から問題があると考えています。一つ目は、任命権の濫用(らんよう)であり、法に反しているという点です。日本学術会議法第7条2項には「第 17条の規定による推薦に基づいて」首相が会員を任命するとある。ーーーこの手続きには裁量権がない=拒否権がないということが中曽根康弘首相の国会答弁 (83年5月12日)でも確認されています。首相に形式的な任命権はあっても、学問上の業績を評価する能力はないからです。
・この原則が踏みにじられました。こんなことが許されたら、例えば国立大学の学長はみな文部科学大臣の任命ですから、この人はダメ、あの人はダメということができてしまう。違法であり、暴挙としか言いようがない話です。
・二つ目に、国際的アカデミー組織の一翼を担う国立アカデミーの会員を、一国のトップが任命拒否するなどという事態は、他のどの国のアカデミーでもありえません。国際的に恥ずかしい学問の冒瀆(ぼうとく)と言っていいでしょう。
・三つ目は、学問の自由に対する侵害です。権力者が特定の学者や、いまの政権の意向に従わない研究者の意見は排除するという。民主主義の破壊を許してはならないと思います。
・(今回任命されなかった)宇野重規さん(東京大学教授)は政治学、加藤陽子さん(東京大学教授)は歴史学、芦名定道さん(京都大学教授)は宗教学の専門 家ですが、いずれも政治的発言は控えめで、研究者としても政治的な偏向がある人ではない。ただ、どなたも安保法制や「共謀罪」などの国の方針に批判的だっ たのは事実です。だから政治的介入で任命されなかったと受け取るのが自然でしょう。しかし、それも政権への批判を意図したのではなく、それぞれの学問的根 拠による主張でした。
・今回の出来事は菅政権で起きましたが、安倍政権を継承したことで起きた問題でもあることは間違いないでしょう。菅義偉首相は、なぜ新会員を任命しなかっ たのか、理由を明らかにすべきで、理由を明らかにできないならば任命見送りは撤回すべきです。学術会議は今後も菅首相の任命拒否を承認することはないで しょう。この問題は政府を告訴する訴訟になりかねない大事件です。
・学問を守るということは、知性と良識を守る社会をつくるということです。日本社会や文化、経済にとっても死活問題です。できるだけ多くの人に、国民全体の問題として理解していただきたいと思っています。

 2003〜14年に日本学術会議会員でもあった日本教育学会元会長佐藤学氏のインタビュー記事。日本学術会議法の設立趣旨と理念そして運用における政府からの独立の持つ意義が丁寧に論じられている。
 2世紀アレクサンドリアのプトレマイオスはアリストテレスらの「天動説」を集成したが、すでに紀元前3世紀サモスのアリスタルコスは、惑星の中心は太陽 でありすべての惑星は太陽の周りを回転しているとする「地動説」を唱えていた。しかしヘレニズムからやがてローマそして中世ヨーロッパとキリスト教教義を 後ろ盾に「天動説」が長く採用され、16世紀にコペルニクスが「地動説」を復活させた後も同じ説を支持したブルーノは火刑となりガリレイも異端審問などで 迫害されている。
 誤った定説・学説はそのような被迫害者を生むだけでなく、天文学や物理学など広範な科学の発展を阻害してもいる。ニュートンの万有引力論などは惑星の周回運動を説明する論拠でもあり、誤った定説が覆されたことがそれ以後の科学そして社会の発展を促した。
 「1949 年に発足した日本学術会議の初期の大きな仕事が原子力の平和利用推進に関わる研究体制の構築だった」(原子力発電の将来検討分科会提言)
http://www.scj.go.jp/.../pdf23/hatsuden-siryo6-4.pdf...'
と自ら分析する日本の学術会議だが、かつて政治主導の原子力開発に懸念を持ちながらも日本原子力学会を中心に積極的に参画し、結果として史上最悪レベルの福島原発事故につながった。
 天動説がそうであるように、学術や定説は常に無謬であるのではなく、だからこそ多様な見解を有する研究者が集うことに意味がある。高い研究業績という水 準を満たした上で、政治社会的には多様な見解を持つ(人文・自然)科学者が自由で自律的な討議と運営により政府に提言することに、僅か10億円程の予算 (その多くは内閣府担当職員の人件費)は無駄ではない。大切なのはその組織の構成や運営に政治や宗教が介入してはならないということ。
 今回の任命拒否は、この国の文化や経済なによりこれから進むべき道を過らせる、ブルーノやガリレオに降りかかった厄災と同じレベルで死活的に重大な悪行だろう。

《日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が任命されなかった問題は、研究者から厳しい批判が起きている。学術会議とはどのような存在で、今回の問題点は何なのか。10年以上にわたって会員を務めた教育学者の佐藤学・学習院大学特任教授に聞いた。
――日本学術会議はどういう組織なのでしょうか。
 私は、2003年から14年まで11年にわたり会員でした。08年以降は第1部(人文・社会科学)の副部長と部長も務めました。
 学術会議は1949年設立で、日本学術会議法は教育基本法や国立国会図書館法と並び、前文をもつ理念的で特別な法律です。その前文には「日本学術会議 は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩 に寄与することを使命とし、ここに設立される」とあります。ーーー



2020年10月 5日
・安倍政権は人事権によって官僚や審議会を支配してきました。その中心にいたのが菅さんです。気に入らない人間は飛ばす、気に入れば重用する。これは彼らの常とう手段なんです。
・私が事務次官だったとき、文化審議会の文化功労者選考分科会の委員の候補者リストを官邸の杉田和博官房副長官のところにもっていきました。候補者は文化 人や芸術家、学者などで、政治的な意見は関係なしに彼らの実績や専門性に着目して選びます。それにもかかわらず杉田さんは「安倍政権を批判したから」とし て、二人の候補者を変えろと言ってきました。
・菅さんの分身とも言われる和泉洋人首相補佐官が文化審議会の委員から西村幸夫さんを外せ、と言ってきたこともありました。西村さんは日本イコモス委員長 です。安倍首相の肝入りで「明治日本の産業革命遺産」が推薦され、15年に世界遺産に登録されましたが、この産業革命遺産の推薦を巡り難色を示していたの が、西村さんでした。任期が来たときに、文科省の原案では西村さんを留任させるつもりでしたが、和泉さんが「外せ」といい、外されました。
・官僚についても同じようなことを繰り返してきましたよね。本来、内閣から独立している人事院を掌握し、「憲法の番人」と言われた内閣法制局も人事で思い 通りにした。成功体験を積み重ねてきた。それで検察の人事にも手を出したが、これは失敗。でも、まだ諦めていないでしょうね。そしてその支配の手を学問の 自由にも及ぼそうとしている。
・政権にとって都合の悪い人間を排除していけば、学術会議が御用機関となります。それでは彼らの狙いは何か。それは、軍事研究でしょう。
 政府は日本の軍事力強化に力を入れてきています。防衛省では15年に「安全保障技術研究推進制度」を導入しました。防衛省が提示するテーマに従って研究開発するものに、お金を提供する制度です。導入当初は3億円だった予算規模は、今では100億円にもなっています。

 菅首相の日本学術会議任命拒否を巡る前文科事務次官前川喜平氏のインタビュー記事。
 指摘の通り、二代続けて法学部出身だが授業は寝ていて自ら学ぶこともなかった人物による憲法を蹂躙し官僚と政治を私物化する政権。
 文化功労者選考分科会委員や文化審議会委員の任命でも、「安倍政権を批判したから」、あるいは首相肝煎の「明治日本の産業革命遺産」推薦に難色を示したから任命を拒否してきた安部政権。その官房長官だったものが今度は学術会議会員の任命を拒否。
 これは官房長官時に集団的自衛権容認の憲法解釈閣議決定に鋭く質問したNHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターを降板に追い込み、官房長官会 見で「総理のご意向」文書など森友・加計の疑惑に質問を続けた東京新聞望月記者に「あなたに答える必要はない」などとやはり事実上排除した器の小ささと卑 劣さ、説明責任回避の姿勢と同じ。
 これを当人は「悪しき前例主義の打破」と唱え、今日夕方読売、北海道新聞、日経とのライブ放映を禁じたいわば閉ざされた「インタビュー」なるもので「推 薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのかを考えてきた」と、またもひたすら用意した原稿を読み上げたが、こうしたみずからに異を唱える学 術研究者を公的組織から排除する不当な人事介入こそ、安部政権の悪しき前例そのものではないか。
 今回任命を拒否された憲法学、政治学、日本近代史、行政法学、刑事法学、キリスト教学の6人の研究者。安部そして菅政権が何を恐れ、何を排除したいのか が自ずと見えてくる。憲法を蹂躙する戦争法や軍事研究体制を構築するには、歴史に根差し憲法や行政法に基づいて政策を提言する学術研究自体が邪魔なのだ。 これはいつかきた亡国の道に他ならない。

《菅義偉首相が日本学術会議の推薦した委員の任命を拒否したことを受けて、学術界に激震が走った。政府からの独立を維持してきた学術界をも、菅政権は官僚 と同様に支配しようと踏み込んできたからだ。いったい何が起こっているのか。元文部科学省事務次官の前川喜平氏が本誌インタビューで問題点を語った。
*  *  *
 今回の問題は菅政権で起こるべくして起こったという感じですが、手を出してはいけないところに手を出してしまいました。
 安倍政権は人事権によって官僚や審議会を支配してきました。その中心にいたのが菅さんです。気に入らない人間は飛ばす、気に入れば重用する。これは彼らの常とう手段なんです。
 私が事務次官だったとき、文化審議会の文化功労者選考分科会の委員の候補者リストを官邸の杉田和博官房副長官のところにもっていきました。
 候補者は文化人や芸術家、学者などで、政治的な意見は関係なしに彼らの実績や専門性に着目して選びます。それにもかかわらず杉田さんは「安倍政権を批判したから」として、二人の候補者を変えろと言ってきました。これは異例の事態でした。ーーー



2020年10月 5日
・菅さんの狙いは忖度(そんたく)を加速させることでしょう。理由を明かしていないことがポイントです。ーーー明確な理由が提示されないほど、忖度は加速するのです。
〈人事によって、大臣の考えや目指す方針が組織の内外にメッセージとして伝わります。効果的に使えば、組織を引き締めて一体感を高めることができます。とりわけ官僚は「人事」に敏感で、そこから大臣の意思を鋭く察知します>著書「政治家の覚悟」
・明確に言わなくても官僚は<察知する>のです。ここに書かれている<官僚>を<学者>に読み替えてください。官僚支配を学術界に広げていくことが菅首相の狙いなのでしょう。こうした手法はあっという間に国民に向けられると思った方がいい。
・今回の学術会議の問題に戻ると、6人が任命されなかった理由を誰も言わないのです。そして人々が詮索を始める。6人は何を言ったか、何に署名したか。誰 と親しいか。ーーー(学術会議の)会員になりたい人はたくさんいるでしょう。その人たちにとって、詮索して出てきた6人の情報が、新たな歯止め、基準に なっていく。
・科学コミュニティーの戦争協力への反省から発足した学術会議は、その歴史からも、政府が科学技術を使って暴走するということをチェックする役割を担っています。やはり菅さんは学術会議が邪魔だと思っているのでしょう。学術会議は基本的に政府のチェック機能ですから。
・菅さんの周囲には警察官僚がたくさんいます。携帯電話値下げ要求によって世論を味方に付け、関連企業に介入し、デジタル庁を新設し、非常に効率的にデジ タル情報を入手していく。スマートフォンの利用などによってデジタル化された大量の個人情報を効率的に収集できるようになれば、フーコーのいう近代国家に よる国民支配がより簡単になるのではないでしょうか。
・そうすれば皆が服従する。そんな社会が目前まで来ているのです。

 菅義偉という政治家を研究の一対象としてきた中島岳志・東京工業大教授(日本政治思想)のインタビュー記事。「人事」で官僚を忖度させ支配する冷酷なやり方が今回は学者に、そして次には国民に向かうとの鋭い指摘。
 官房長官の際の官僚の用意した文書の読上げか、「ご指摘は当たらない」「適切に対応」「既に答えた通り」を乱用して質問に条理に基づく回答を全くしない 姿勢は、首相になっても変わらない。本人は首相就任以来記者会見は9月16日だけ、国会も7月末野党から憲法の規定に則り要請された臨時国会はついに開か ず、安倍前首相は辞任により逃亡し、同日の臨時国会で首相指名のみで解散させ所信表明もない。
 日本学術会議の件に関しては2日歩きながら記者団に「法に基づいて適切に対応した結果だ」と述べただけ。「法に基づいて適切に対応した」とは、自分は正 しいと自分だけが納得しているが何の説明にもなっていない。適切かどうかはそれを行ったものが言うのではなく、様々な検証により主権者たる国民が判断する ことだ。「あなたに答える必要はない」と東京新聞望月記者をそしてその背後にいる主権者を面罵したものが今度は理由も示さず特定の研究者を政府への提言機 関から排除する。
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実 態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障さ れるものと考えております。(第98回国会 参議院 文教委員会 第8号 昭和58年5月12日)
https://kokkai.ndl.go.jp/...
 このようにかつて学術会議会員の公選制を学会からの推薦に基づく任命制に変更する際の首相答弁は、明確に「(任命という)政府の行為は形式的行為」であ り、「学問の自由独立というものはあくまで保障される」と説明している。その後2004年に日本学術会議法は、学術会議の所轄を総務大臣から内閣総理大臣 に変更すること、日本学術会議自身が会員候補者を選考する方法に一部改正されたが、自立した「推薦」と形式的な「任命」の本質は変わっていない。
第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員をもつて、これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
 今回の任命拒否は、憲法の保障する学問の自由に抵触し、任命行為を形式的なものとする国会における総理答弁をも蹂躙し、法の定める210人の定員に6名 の欠員すら生じさせるまさに違法極まる言語道断な行為である。政治を私物化する点でこの首相は前任者と何ら変わりはない、むしろ説明責任をまるではたす素 振りも示さない点でより悪質でしかない。森友、加計、桜そして河井議員の大規模選挙買収への資金提供など、前内閣官房長官としての責任を取らせて辞職させ ることだけがこの国のまともな未来を可能にする。
https://mainichi.jp/articles/20201003/k00/00m/040/135000c...

《「科学者の国会」と呼ばれる日本学術会議が推薦した新会員候補者のうち6人を菅義偉首相が「任命拒否」した。異例の政治介入に対し、各界から「学問の自 由を侵す暴挙」との声が上がる。政権側は理由を明らかにしていないが、拒否された候補は過去に政府方針に反対した経緯があり、見せしめ的手法で異論を排除 しようという政権側の思惑がにじむ。近著「自民党 価値とリスクのマトリクス」などで菅氏の政治手法を分析している中島岳志・東京工業大教授(日本政治思 想)は、「こうした手法はあっという間に国民に向けられると思った方がいい」と警鐘を鳴らす。この問題について、毎日新聞はさまざまな識者にインタビュー し、<#排除する政治〜学術会議問題を考える>シリーズとして報じていきます。【浦松丈二/統合デジタル取材センター】
菅首相の術中にはまったメディア
 ――6人を任命しなかった菅首相の狙いをどう見ますか。
 ◆菅さんの狙いは忖度(そんたく)を加速させることでしょう。理由を明かしていないことがポイントです。理由を明かさないことで「あの時の発言が引っか かったのではないか」「いやあの発言だ」と周囲が詮索し、自主規制のハードルを上げてしまいます。明確な理由が提示されないほど、忖度は加速するので す。ーーー



2020年10月 4日
・憲法23条が保障する学問の自由には、「個人が国家から介入を受けずに学問ができること」と、「公私を問わず研究職や学術機関が、政治的な介入を受けず 自律すること」の二つが含まれる。今回の人事介入は学術会議の自律を侵害している。学問の自由に、公的研究職や学術機関の自律が含まれるのは、一般的な解 釈だ。(東京都立大 木村草太教授   憲法)
・「学問の自由」を保障する憲法23条は、明治憲法時代に起きた滝川事件や天皇機関説事件など、学説が国家権力に侵害された歴史を踏まえて作られ た。ーーーー同会議が「学問の自由」の実践と深くかかわる組織として設立されたことは明らかだ。(日本学術会議法)3条で職務の独立性を強調しているの も、同会議の自律性を大切にしているからにほかならない。さらに17条は、同会議の会員への推薦の基準を「優れた研究又は業績」という専門家集団でなけれ ば判断しえない事柄に委ねており、そうした知見を持たない内閣の任命拒否を想定していない。(江藤祥平 上智大准教授)
・学術会議は、政府の施策について独立した学術的な観点から提言する。任命するのは首相だがそれにおもねる機関ではない。その中から特定のメンバーだけを排除すること自体が、学問的な専門性に対する敬意を欠き、研究者の名誉を損ねる行為で、言語道断だ。
・安倍前首相のもとでは、集団的自衛権の行使容認のため内閣法制局長官を交代させるなど、意に沿わなければ、慣例を破ってでも人事に介入して政策を進める 手法がとられてきた。第三者的な役割が期待される機関の独立性を保つなど、慣例が持っていた意味を顧みることはなかった。菅政権もその本質が変わらないこ とがあらわになった。
・今回はさらに、任命拒否の目的や理由さえ説明しようとしない。政府に批判的な人を狙い撃ちで排除したとしか思えないが、あえて不明確にすることで、研究 活動の萎縮や忖度(そんたく)を狙っているとも考えられる。「たてつくと不利益がある」という無言の圧力であり、今後への影響も大きいだろう。(明治大学 西川伸一教授   政治学)

 菅首相による学術会議会員任命拒否に対する、憲法学、政治学の研究者3名の言葉。
 かつてこの国の学術研究が政府の弾圧によって戦争翼賛体制に組み込まれ、この国を破局に導いた反省から作られた憲法23条と政府への提言機関としての学 術会議。今回の任命拒否はその自由と自律性を根底から破壊する暴挙であり、3人の論者いずれもだが、特にこの9月末まで学術会議会員だった西川伸一教授の 「言語道断」「政府に批判的な人を狙い撃ちで排除」「あえて不明確にすることで、研究活動の萎縮や忖度を狙っている」との批判にこの任命拒否の由々しい本 質が示されている。
 3代目ぼんぼんであれ苦労人であれ、自らの権力行使が公正であることへの謙虚さも学術研究への敬意も、異論に耳を傾ける度量も決定的に欠けたものが政治 を担うことほど社会にとって大きなリスクはない。これを許せばこの国は政治も学術も経済もそして社会の公正さも歪んだまま衰退していく。

《「日本学術会議」が推薦した会員候補のうち6人が任命除外された問題。憲法学者らからは「学問の自由」が侵害されると批判があがった。いったい何が問題なのか、3人の識者に聞いた。
 東京都立大の木村草太教授(憲法)の話
 憲法23条が保障する学問の自由には、「個人が国家から介入を受けずに学問ができること」と、「公私を問わず研究職や学術機関が、政治的な介入を受けず自律すること」の二つが含まれる。学術の観点から提言をする日本学術会議は、学術機関の一種だ。
 憲法23条は「公的学術機関による人選の自律」も保障しており、今回の人事介入は学術会議の自律を侵害している。学問の自由に、公的研究職や学術機関の自律が含まれるのは、一般的な解釈だ。
   ◇   ◇   
 江藤祥平・上智大准教授の話
 「学問の自由」を保障する憲法23条は、明治憲法時代に起きた滝川事件や天皇機関説事件など、学説が国家権力に侵害された歴史を踏まえて作られた。自由 を守る手段として、研究者の人事が大学の自主的な判断に基づいて行われることが大切だと、最高裁の判例は明快に語っている。
 今回の任命拒否で問われているのは、この自主的な判断への介入の当否である。日本学術会議は大学ではない。しかし、日本学術会議法が冒頭で「科学者の総 意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」とすると明記していることを考えれば、同 会議が「学問の自由」の実践と深くかかわる組織として設立されたことは明らかだ。3条で職務の独立性を強調しているのも、同会議の自律性を大切にしている からにほかならない。
 さらに17条は、同会議の会員への推薦の基準を「優れた研究又は業績」という専門家集団でなければ判断しえない事柄に委ねており、そうした知見を持たない内閣の任命拒否を想定していない。
 こうした同会議の特質を考えると、理由を明らかにせず候補者の任命を拒否するのは、同会議の自律性に対する侵害であり、自律性を守る盾である「学問の自由」への挑戦といえる。
 政府は「広い視野」に立って精査することは当然だと主張するが、具体的な中身を明らかにしていない。これでは政府に批判的な研究者を狙い撃ちにし、学問の萎縮効果を狙ったとみられても仕方がない。
   ◇   ◇   
 9月末まで日本学術会議会員を2期6年務めた明治大学の西川伸一教授(政治学)の話
 学術会議は、政府の施策について独立した学術的な観点から提言する。任命するのは首相だがそれにおもねる機関ではない。その中から特定のメンバーだけを排除すること自体が、学問的な専門性に対する敬意を欠き、研究者の名誉を損ねる行為で、言語道断だ。
 安倍前首相のもとでは、集団的自衛権の行使容認のため内閣法制局長官を交代させるなど、意に沿わなければ、慣例を破ってでも人事に介入して政策を進める 手法がとられてきた。第三者的な役割が期待される機関の独立性を保つなど、慣例が持っていた意味を顧みることはなかった。菅政権もその本質が変わらないこ とがあらわになった。
 今回はさらに、任命拒否の目的や理由さえ説明しようとしない。政府に批判的な人を狙い撃ちで排除したとしか思えないが、あえて不明確にすることで、研究 活動の萎縮や忖度(そんたく)を狙っているとも考えられる。「たてつくと不利益がある」という無言の圧力であり、今後への影響も大きいだろう。(佐藤恵 子、豊秀一、千葉雄高)》



2020年10月 2日
「個人的な話をすれば、共謀罪の時に「あんなものをつくっては駄目だよ」と、参議院の法務委員会に参考人で呼ばれたので言ったことがある。治安立法として 最悪だということよりも、「そんなものをつくっても多分使えない」と言ったのだ。つくるだけ無駄なもののために政治的空白を大きくするのは、本当に無駄。 こんなところにエネルギーを注いだらいけないと言ったのだ。結果、できて3年だが、一度も使われたことがない。政権にとって有益な助言をしてあげたと思っ ていたのだが、向こうはそう思っていなかったようだ」
「まず、一般公務員の任命と同じだと思ってるようなところがある。菅さんは首相就任の時、「言うことを聞かない者はクビにする」というようなことを言っ た。学術会議の会員というのは建前上公務員ではあるが、選考基準がはっきり決まっているので、任命権者だからといって自由にクビにするとか任命しないと か、できるわけがない。なぜできないかというと、憲法23条の学問の自由を保障する必要があるからだ」
「しかし、私個人の問題ではなくて、むしろ学術会議や大学を言うがままに支配したいということの表れだと思っている。何が問題かと言うと、防衛省が多額の 研究助成予算で持っている。ところが大学や学術会議は、3年前に確認したが軍事研究はやらないということを言って、あまり応募していない。その代わりに普 通の研究経費を上げろと言っているのだが、政府は言うことを聞かない。政府にとってみたら、軍事研究をしろと言っているのに言うことを聞かないのが学者だ と思っているはず。ここが多分、本当の問題だと思う」
「学問を監督しようと言っているが、それが自由の侵害ではないか。もう一つ言うと、ほとんど同じ構造をもっている条文が憲法6条1項にある。天皇の国事行 為だ。「天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する」とある。日本学術会議法では「学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」。主語 と述語は入れ替わるが、同じ構造だ。ということは官房長官の言い方だと、国会が指名した人物について天皇が「この者は駄目だから任命しない」と言えること になる。同じ理屈だ。つまり任命権があることを、「任命が拒否できる権限もある」というふうに思うのは間違いなのだ」
「総理の下にあるけれど、総理からは独立してる。学術会議は学術行政について政府に勧告権もっているが、独立性がなくなれば、政府がこう言ってくれという ことしか言わなくなってしまう。だから存在意義がなくなり、学問自体の独立や自由が公的機関では保障できなくなる。だからこの法律は、「任命しない」とい うことは考えていないのだ」立命館大法科大学院 松宮孝明教授

 「日本学術会議」会員への任命を拒否した首相の行為に対する、その拒否された教授による実に明快な批判。
 「法律上、内閣総理大臣の所轄であり、会員の人事を通じて一定の監督権を行使するのは法律上可能。その範囲内で行っているので、ただちに学問の自由の侵 害にはつながらない」との加藤官房長官の説明はいつもながらの誤魔化し。「ただちに」ではなく、ゆっくりと学問の自由を侵害していくこの政権の目論見は見 え透いている。任命拒否という人事を通じて政府が「日本学術会議」をコントロールできるのなら、天皇が総理大臣を任命しないことも可能となる。実は先代も この首相も天皇が「任命しない」という選択肢があればこのような愚かな政権が続くこともなかったわけだが。
 政権が主導する戦争法制や軍事研究に異を唱える研究者を排除するというこの政権のまさに政治を私物化する行為。「この政権、とんでもないところに手を出してきた」「これは大変なことですよ」との思いを共有したい。

《立命館大法科大学院の松宮孝明教授は1日、京都新聞社の取材に対し、政府が「日本学術会議」会員への自身の任命を見送ったことについて、心境を語った。松宮教授の発言は以下の通り。
 ―任命されなかったことについて率直な気持ちは。
 率直にはほっとした。仕事が一つ減ったな、と。個人的にはそういうところで、別になりたいと思ってたわけでないので、まずはそれを理解してほしい。
 それを抜いて率直に言うと、「とんでもないところに手を出してきたなこの政権は」と思った。学術会議というのは、まず憲法23条の学問の自由がバックに あり、学術は政治から独立して学問的観点で自由にやらなければいけないということでつくられた学者の組織だ。もちろん内閣総理大臣の下にはあるが、仕事は 独立してやると日本学術会議法で定められている。そこに手を出してきた。
 しかも法律の解釈を間違っている。日本学術会議法では会員の選び方について、学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命すると書いてある。推薦に基づかない任命はない代わりに、基づく以上は「任命しない」もないのだ。
 どのような基準で推薦しているかというと、結局その分野の学問的な業績、そして学者として力があるということを見て決める。これも日本学術会議法17条 に書いてある。推薦に対して「不適格だ」というなら、それは研究者としての業績がおかしいと言わなければ駄目だ。ところが、その専門家ではない内閣総理大 臣に、そのようなことを判断できる能力はない。だから結局、機械的に任命するしかないのだが、今回それをしなかった。任命をしないのならその理由を問われ るが、総理には言うことができないだろう。
 ―官房長官は「個々については人事に関わるのでコメントは差し控える」と答えている。
 差し控えるというより、コメントができないし、できるわけがない。「この先生の分野で評価したところ、こういう点でおかしいと思う」と言わなければならないのだから。一番大きな問題は、これは学問の自由に対する挑戦で、それを大胆にやってしまったな、という話だ。
■共謀罪、政権に有益な助言してあげたのだが
 ―先生を含めて6人が任命されなかった。
 これがどれだけ重大な問題であるのか、あまり分かっていないのではないか。
 まず、一般公務員の任命と同じだと思ってるようなところがある。菅さんは首相就任の時、「言うことを聞かない者はクビにする」というようなことを言っ た。学術会議の会員というのは建前上公務員ではあるが、選考基準がはっきり決まっているので、任命権者だからといって自由にクビにするとか任命しないと か、できるわけがない。なぜできないかというと、憲法23条の学問の自由を保障する必要があるからだ。
 ―政権側は、先生を任命しなかった理由についてコメントを避けているが、ご自身はなぜ外されたと考えるか。心当たりは。
 個人的な話をすれば、共謀罪の時に「あんなものをつくっては駄目だよ」と、参議院の法務委員会に参考人で呼ばれたので言ったことがある。治安立法として 最悪だということよりも、「そんなものをつくっても多分使えない」と言ったのだ。つくるだけ無駄なもののために政治的空白を大きくするのは、本当に無駄。 こんなところにエネルギーを注いだらいけないと言ったのだ。結果、できて3年だが、一度も使われたことがない。政権にとって有益な助言をしてあげたと思っ ていたのだが、向こうはそう思っていなかったようだ。
 しかし、私個人の問題ではなくて、むしろ学術会議や大学を言うがままに支配したいということの表れだと思っている。何が問題かと言うと、防衛省が多額の 研究助成予算で持っている。ところが大学や学術会議は、3年前に確認したが軍事研究はやらないということを言って、あまり応募していない。その代わりに普 通の研究経費を上げろと言っているのだが、政府は言うことを聞かない。政府にとってみたら、軍事研究をしろと言っているのに言うことを聞かないのが学者だ と思っているはず。ここが多分、本当の問題だと思う。
■「任命拒否できる権限」は間違い
 ―官房長官会見では学問の自由については「法律上、内閣総理大臣の所轄であり、会員の人事を通じて一定の監督権を行使するのは法律上可能。その範囲内で行っているので、ただちに学問の自由の侵害にはつながらない」としている。
 学問を監督しようと言っているが、それが自由の侵害ではないか。もう一つ言うと、ほとんど同じ構造をもっている条文が憲法6条1項にある。天皇の国事行 為だ。「天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する」とある。日本学術会議法では「学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」。主語 と述語は入れ替わるが、同じ構造だ。ということは官房長官の言い方だと、国会が指名した人物について天皇が「この者は駄目だから任命しない」と言えること になる。同じ理屈だ。つまり任命権があることを、「任命が拒否できる権限もある」というふうに思うのは間違いなのだ。
■独立性なくなれば存在意義なくなる
 拒否権があるかどうかというのは、結局どういう基準でその人を選んで任命することになっているかという法律全体の構造をみないと駄目なのだ。日本学術会 議法は第3条で独立を宣言している。3条をみると、まず柱書きで、「日本学術会議は独立して左の職務を行う」とはっきり独立と書いている。「科学に関する 重要事項を審議し、その実現を図ること」「科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること」となっていて、学術会議の職務は独立なんだと書いて ある。
 総理の下にあるけれど、総理からは独立してる。学術会議は学術行政について政府に勧告権もっているが、独立性がなくなれば、政府がこう言ってくれという ことしか言わなくなってしまう。だから存在意義がなくなり、学問自体の独立や自由が公的機関では保障できなくなる。だからこの法律は、「任命しない」とい うことは考えていないのだ。
 ―任命から外れたと日本学術会議事務局長から電話で聞いた時のやりとりは。
 事務局は「ミスで落ちたんじゃないかと思って内閣府に問い合わせた。そしたらミスではないとのことだった」と話していた。「しかし、落とした理由は言え ないと言われた」とも。事務局は多分とても困惑したと思う。私もそう感じた。「これは大変なことですよ」と言ったら「大変なことですね」と言われた。》




2020年10月 2日
「菅義偉衆院議員(神奈川) 9回にわたる「若手議員の会」の勉強会を通じて(中略)有識者の皆さまの検証によって、「従軍慰安婦」の強制連行など実際に はなかったことが明らかになっているにもかかわらず、それが堂々と中学生の歴史教教科書に載っているのは、非常に問題であります。「従軍慰安婦」に軍が深 く「関与」していた、という誤った情報を教科書に載せているだけでも問題ですが……」『若手議員は発言する  「歴史教科書への疑問」(1997年、展転 社)』
「過去、日本の韓国統治を謝罪する内容を盛り込んだ「村山談話」や、強制的な慰安婦募集があったことを認める「河野談話」を発表したために、日本の外交は今もって制約を受け、国益を大きく損ねた経緯があります」2010年8月7日のブログ
「『軍の深い関与は誤り』『強制連行はなかった』。どちらもひどい内容です。慰安婦制度は『関与』どころか、軍が主体となって作り、軍が運用したんです。 このことはすでに90年代当時ですら、軍の資料で明らかになっていたことで、そこを否定するというのは、ちょっと信じがたい話です。慰安所は業者経営と軍 直営とがありましたが、いずれも管理・統制は軍が担いました。軍が設置し、規則制定や料金設定も軍が行い、利用も軍人・軍属に限られた。慰安婦にされた女 性の徴募(後述)も軍の指示で業者が行ったケースが大半です。女性の慰安所への移送なども軍が担った。『関与』どころか、軍が主体となったのは明白です」 吉見義明中央大名誉教授
「慰安婦問題で重大な人権侵害があったことは証明されていますし、国際的にも広く認められている。それを否定することこそ、世界中が日本の人権感覚を疑 い、国益を損なう結果になることはこれまでの経緯から明らかです。相手の言い分をそのままのめ、というわけではない。日本が調べ、判明した事実は認め、責 任の所在を明らかにして謝罪し、賠償をする。そして教育などを通じて再発防止策を講じる。これは『自虐』でも何でもない。これこそ日本への信頼を高め、日 本人としての誇りを育むことになると確信しています」同

 毎日新聞の良記事。
 かつて日本軍が「深く関与」どころではなく、主体的に設立・運営した慰安婦制度に対する反省のかけらもなく、自身やその属する国の過去を冷静に見ること ができない、極めて不勉強で狭小かつ独善的な歴史観を共有する右派政治家が安倍政治の継承を唱えて首相となるこの国。かつて科学者らが戦争遂行に協賛した 過去への反省として設立された「日本学術会議」に、憲法を逸脱した安全保障関連法に反対し特定秘密保護法や共謀罪に異を唱えた研究者らを排除するこの政権 の狭小な暗愚が明らかとなった今、この人物のあまりに硬直し矮小化した歴史認識の問題を明らかにする必要がある。
 過去を直視せず、独善的な歴史認識に凝り固まって、直言する官僚や学者を排除し、様々な質問や意見に「ご指摘は当たらない」「既に述べた通り」の定型句のほかはひたすら官僚が用意した原稿を棒読みするだけの政治家に、この国の未来を作り出せるわけがない。

《安倍晋三前首相が退場し、今度は菅義偉政権である。「外交の安倍」の7年あまりで、中国や韓国との関係はすっかり冷え切ってしまった。だからこそ菅首相 には期待したい……のだが、心配である。なぜなら菅首相、史実に反する歴史修正主義的な発言をしてきた知られざる過去があるからだ。【吉井理記/統合デジ タル取材センター】
「歴史教育を考える若手議員の会」のメンバーだった菅首相
 あまり人目に触れていないであろう1冊の本がある。
「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が編集した本「歴史教科書への疑問」より。菅義偉首相は従軍慰安婦の強制連行について「実際にはなかった」と記していた=2020年9月29日、吉井理記撮影
 今から23年前に出た「歴史教科書への疑問」(1997年、展転社)である。編んだのは「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」。当時の歴史教科 書を「反日的」と断じ、従軍慰安婦問題の記述をなくそうと活動した自民党議員の集まりで、本にはこの会の勉強会の模様が収録されている。
 会長には故中川昭一氏が座り、安倍前首相が事務局長、幹事長は衛藤晟一前少子化担当相と、復古的かつ右派色の濃いメンバーが顔をそろえる。
 この会に96年衆院選で初当選したばかりの菅首相が「委員」として名を連ねていたことは、本の存在にもまして知られていない。若き日の菅首相いや菅議員、本の「若手議員は発言する」という一節に、次のような一文を寄せていた(抜粋)。
 <菅義偉衆院議員(神奈川) 9回にわたる「若手議員の会」の勉強会を通じて(中略)有識者の皆さまの検証によって、「従軍慰安婦」の強制連行など実際 にはなかったことが明らかになっているにもかかわらず、それが堂々と中学生の歴史教教科書に載っているのは、非常に問題であります。「従軍慰安婦」に軍が 深く「関与」していた、という誤った情報を教科書に載せているだけでも問題ですが……(後略)>
「軍の深い関与は誤り」「強制連行はなかった」は誤り
 今後、日本外交のかじ取りをする菅首相である。歴史的事実に反する発言をすれば、中韓のみならず、70年あまりの戦後外交で積み上げたアジア諸国との信頼をも破壊しかねない。当時の菅氏の主張は事実か?
 「『軍の深い関与は誤り』『強制連行はなかった』。どちらもひどい内容です」と絶句するのが、慰安婦問題研究の先駆者として知られる中央大の吉見義明名 誉教授である。ちなみにこの勉強会には吉見さんも招かれた。ほとんどは安倍氏や衛藤氏の意向に沿う識者だったが、吉見さんは例外だった。当時の菅氏につい ては「印象にない」という。
 「慰安婦制度は『関与』どころか、軍が主体となって作り、軍が運用したんです。このことはすでに90年代当時ですら、軍の資料で明らかになっていたことで、そこを否定するというのは、ちょっと信じがたい話です」ーーー



2020年10月 1日
・「日本学術会議」が新会員として推薦した候補者6人を菅義偉首相が任命しなかったことが明らかになった

 自らに批判・苦言を呈するであろう学者をあらかじめ排除する、この「苦労人」首相の 狭量さと冷淡さがよく出ている。
 この6人のうちのひとり加藤陽子東大教授は安部政権の集団的自衛権解釈変更や安全保障関連法を批判して「立憲デモクラシーの会」の呼びかけ人となった。
 また、岡田正則早稲田大教授は『国の不法行為責任と公権力の概念史─国家賠償制度史研究』で不法行為に対する国の責任を問わない「国家無答責」の法理を 歴史的に検証して根底から批判したことで知られ、昨日も日経は福島原発事故で東電と国に賠償を命じた福島高裁判決に関する岡田教授の「国の責任を厳格に判 断しており妥当な判決だ。2002年の段階で安全性の確保を東電に命じるべきだったとしており、3月の前橋地裁判決より国に高度な監督責任を求めた形だ」 との論評を掲載している。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO22079040Q7A011C1CR8000...
 会議が推薦した候補者を政府が任命しなかったのは初めて。この内閣が安倍内閣以上に苦言に耳を傾けず政治を私物化する薄っぺらで独善的なものになるということ。

《1日付で菅義偉首相に任命された日本学術会議の新しい会員について、同会議が推薦した候補者6人が含まれていないことが、会議関係者への取材で分かっ た。会員の任命は首相が行うが、同会議が推薦した候補者が任命されなかったのは初めて。任命されなかった学者からは「学問の自由への乱暴な介入だ」と批判 が出ている。
 会議の会員は210人。任期は6年で3年ごとに半数が交代する。日本学術会議法によると、会員は会議が候補者を選考して首相に推薦し、推薦に基づいて首相が任命する。事務局によると、推薦した候補者が任命されなかった例は過去にないという。
 同会議は1日、新会員99人を発表した。複数の関係者によると、会議は8月末、政府に105人を推薦したが、うち6人が任命されなかった。事前に問い合わせたところ、政府からは「間違いや事務ミスではない」と返答があったという。
法の番人の退任劇、いま明かす 車中で後任は黙り込んだ
「見たいものだけ見る政治」支えた国民意識 宮台真司氏
 任命されなかった大学教授の1人は、安保法制や共謀罪法に反対の立場をとってきた。今回の措置について「学問の自由を保障する憲法に違反する乱暴な介入 だ」と批判した。一方、加藤勝信官房長官は1日の会見で「直ちに学問の自由の侵害ということにはつながらないと考えている」と述べた。
加藤官房長官「学問の自由の侵害につながらない」
 加藤勝信官房長官は1日午前の記者会見で、日本学術会議の新会員候補をめぐり、同会議が推薦した候補者のうち、数人が菅義偉首相に任命されなかった理由 について、「個々の候補者の選考過程、理由については人事に関することでありコメントは差し控える」と説明を避けた。また、「学問の自由の侵害にはつなが らない」とも述べた。
 同会議は8月31日に新会員候補105人の推薦を政府に提出したが、政府が1日に任命したのは99人だけだった。今の任命の仕組みになった2004年以降、推薦された候補が任命されなかったケースについて加藤氏は、「そうした事例があるとは承知していない」と述べた。
 また、政治判断による人事介入が憲法が保障する「学問の自由」の侵害になるのではないかと問われると、「首相の所轄で、人事等を通じて一定の監督権を行 使することは法律上可能となっている」とした上で、「直ちに学問の自由の侵害にはつながらないと考えている」と述べた。(菊地直己)》



2020年10月 1日
「平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した地震の『長期評価』を踏まえた試算をしていれば、大規模な津波が到来する可能性を認識することができた。国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ」

「(長期評価は)国自らが地震に関する調査などのために設置し、多くの専門家が参加した機関が公表したもので、相当程度の客観的かつ合理的根拠を有する科学的知見であったことは動かしがたい」
「国みずからが設置し、多数の専門学者が参加した機関による重要な見解であり『長期評価』を踏まえて、直ちに試算を開始するよう東京電力に指示するか、みずから試算をするなどしていれば、大規模な津波が到来する可能性を認識できた」
「(当時の原子力安全・保安院と東京電力など電力事業 者が海外の事例などを踏まえて想定を超える津波や水漏れのリスクについて話し合っていた「溢水勉強会」と呼ばれる非公開の勉強会など)平成18年には敷地 を越える津波が到来すれば、重大事故を起こす危険性が認識されていた」
「国と東京電力は『長期評価』に基づく津波の試算が行 われれば、対策を講じなければならなくなる可能性を認識しながら、そうなった場合の、主に東京電力の経済的な負担などの影響の大きさを恐れるあまり、試算 自体を避け、あるいは試算結果が公になることを避けようとしていたと認めざるをえない」
「不誠実ともいえる東京電力の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかったといわざるえない」
「(1審で東京電力の半分にとどまるとした国の賠償責 任の範囲について)原子力発電所の設置・運営は国家のエネルギー政策に深く関わる問題であり、国がみずからの責任において原発の設置を許可したものである ことを考慮すれば、責任の範囲を一部に限定することは相当ではない」
「(避難指示の対象になった福島県浪江町や富岡町などの原告について)ふるさとを喪失した損害がある」などとして賠償額を大幅に上積みし一審の4億9000万円余り→10億1000万円の賠償を命じた仙台高等裁判所判決
「国と東京電力の責任を明確に認めたことは、事故の再 発防止や被害者の全面的な救済だけでなく、被災地の復興にとっても大きな意義がある。賠償の対象地域の拡大や賠償水準の上積みを認めた点は、原告のみにと どまらず広く被害者の救済をはかるという意味においても前進と評価できる」原告団声明
「裁判が長期化し、判決を待たずしておよそ100人が亡くなった。この喜びを分かち合うことができないことは残念だ。東京電力と国は責任を認めて1日も早く救済すべきで、上告しないよう求めたい」弁護団事務局長、馬奈木厳太郎弁護士
「判決を聞いたとき、司法は生きていたと感じた。1審よりも踏み込んで国の政策が間違っていたことを示してくれてよかった」原告団長 福島県相馬市 中島孝さん
「原告団みんなの頑張りがこの判決に結びついたと思い ます。国の責任を認めることが私たちが一番望んでいたことなので、本当にほっとして涙が出そうです。これまでたくさんの苦労や喪失感など精神的な被害を受 けてきましたが、今回の判決で心が救われほっとしています。お金の問題ではない部分はありますが、とりあえず賠償という形で心にけじめをつけることはやむ をえないと思いますので、原告1人1人に寄り添った判決になったと思います」原告の1人 福島市果樹農家 阿部哲也さん
「国がいわば国策として進めてきた事業について、しっ かりと命令をしなかったことや、東京電力に依存する形での監督しかできなかったことを大きな問題ととらえ、東電と同等の責任を共に負うべきだと判断したの は非常に画期的だ」国会事故調査委員会委員を務めた中央大学法科大学院 野村修也教授
「関係省庁で判決内容を精査し適切に対応」加藤官房長官

 昨日の東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐる福島県内の住民や避難者ら約3700人による福島集団訴訟仙台高等裁判所判決の包括的なNHK記事。

 2011年3月11日東日本大震災の地震と津波で史 上最悪の全電源喪失による臨界事故を引き起こして多くの被災者と福島県だけで5万人を超える避難者を出し、大熊町双葉病院の避難患者44人を死亡させ、そ の後福島県の震災関連死2272名のうち少なくとも原発事故関連死1368名の死者を出した東京電力福島第一原発。
 1995年の阪神・淡路大震災を契機に設置された国 の地震調査研究推進本部は2002年、「長期評価」として「日本海溝付近のプレート間で発生したM8クラスの地震は17 世紀以降では、1611年の三陸沖、1677年11月の房総沖、明治三陸地震と称される1896年の三陸沖(中部海溝寄り)が知られており、津波等により 大きな被害をもたらした。よって、三陸沖北部〜房総沖全体では同様の地震が約400年に3回発生しているとすると、133年に1回程度、M8クラスの地震 が起こったと考えられる」と指摘した。当時は1896年の三陸沖地震以来100年ほど経過している。
https://www.jishin.go.jp/…/cho…/kaikou_pdf/sanriku_boso.pdf…「長期評価」'
 これを受けて東電の子会社は「長期評価」に基づいて2008年3月、福島第一原発に「最大15・7メートル」の津波が来るという予測を東電経営陣らに報告したが、東電経営者と国はなんの対策も取ることなく9.11を迎えた。
 現在この同じ地震調査研究推進本部は南海トラフにつ いて、「この領域では大局的に100〜200年で繰り返し地震が起きていると仮定して、地震発生の可能性を評価し」「M8〜M9クラス地震発生確率」を 「30年以内に、70%〜80%」としている。この「長期評価」に科学的根拠や信頼性がないとしてその対策を怠った東電幹部の刑事責任を認めなかった判決 などもあるが、その論理を突き詰めれば南海トラフや首都直下地震への対策も「不要」ということになる。
 今回の高裁判決は、裁判長らが福島県被災地の現地視 察をおこなったうえで出し、高裁としては初めて東電だけではなく原子力発電を管轄する原子力安全・保安院と監督官庁の経産省の責任を明確に認定し国に賠償 を命じた。東京電力福島第一原子力発電所の事故についてはそれが起きた2011年当時の民主党政権だけではなく、それに先立つ自民党政権とりわけ第一次安 倍内閣の責任も重い。
「政府は、巨大地震に伴って発生する津波被害の中で、 引き波による海水水位の低下で原子炉の冷却水も、停止時の核燃料棒の崩壊熱を除去する機器冷却系も取水できなくなる原発が存在することを認めた。巨大な地 震の発生によって、原発の機器を作動させる電源が喪失する場合の問題も大きい」巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守るこ とに関する質問主意書 平成十八年十二月十三日提出 提出者  吉井英勝
「我が国の実用発電用原子炉に係る原子炉施設(以下 「原子炉施設」という。)の外部電源系は、二回線以上の送電線により電力系統に接続された設計となっている。また、重要度の特に高い安全機能を有する構築 物、系統及び機器がその機能を達成するために電源を必要とする場合においては、外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計と なっているため、外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源からの電力により、停止した原子炉の冷却が可能である」
「地震、津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安 全性については、原子炉の設置又は変更の許可の申請ごとに、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成二年八月三十日原子力安全委員会決 定)等に基づき経済産業省が審査し、その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり、御指摘のような事態が生じないように安全の確保 に万全を期しているところである」
「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブル により原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」衆議院議員吉井英勝君提出巨大地震の発生に伴う安全機 能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対する答弁書 平成十八年十二月二十二日 内閣総理大臣 安倍晋三
http://www.shugiin.go.jp/.../html/shitsumon/a165256.htm
http://www.shugiin.go.jp/.../html/shitsumon/b165256.htm
 2006年12月の京都大学工学部原子核工学科出身 の吉井議員からの、津波や地震に曝されて2系統しかない日本の原発における電源喪失による炉心溶融の危険性などを問われての政府回答。まさに「安全神話」 に寄りかかった怠慢が行間からにじみ出ている。国の組織である地震調査研究推進本部や東電の安全部門からの津波の危険性に対する指摘を傲慢にも無視し続け た東電と国の責任は極めて重い。
 官房長官の「関係省庁で判決内容を精査し適切に対 応」とは、内閣とは別の経産省が判決に納得せずその責任で控訴するの意か。この内閣が掲げる「省庁の縦割り打破」はどこへ消えたのか。安倍政治を引き継ぐ 愚かな政権が、過去への反省の上にこの国の真っ当な未来を作ることはない。帰還困難区の指定だけをなくしても多くの人々は帰還できず、福島原発事故の負の 遺産は解消されない。控訴せず国の自己責任を認める。それが「国民のための内閣」というものだ。

《東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐり、福島県で暮らす住民など3600人余りが訴えた集団訴訟で、仙台高等裁判所は「大規模な津波が到来する可 能性を事故の前に認識できたのに、国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ」などとして、国と東京電力に総額10億円余りの賠償を命じ ました。

全国の集団訴訟で、国の責任を認める2審判決は初めてです。
この裁判では、原発事故のあとも福島県内で暮らし続ける住民や避難した人など3600人余りが、生活の基盤が損なわれ精神的な苦痛を受けたとして国と東京電力に賠償を求めています。
1審の福島地方裁判所は3年前、国と東京電力の責任を認め、総額4億9000万円余りの賠償を命じていました。
30日の2審の判決で、仙台高等裁判所の上田哲裁判長 は「平成14年に政府の地震調査研究推進本部が発表した地震の『長期評価』を踏まえた試算をしていれば、大規模な津波が到来する可能性を認識することがで きた。国が東京電力に対策を求める権限を行使しなかったのは違法だ」と指摘し、東京電力とともに国の責任を認めました。
また「国と東京電力は『長期評価』に基づく津波の試算を行って対策を講じた場合の、主に東京電力の経済的な負担などの影響の大きさを恐れるあまり、試算自体を避けるなどしたと認めざるを得ない」と、指摘しました。
そのうえで1審では、東京電力の半分にとどまるとした 国の賠償責任の範囲について「国がみずからの責任で原発の設置を許可したもので、範囲を限定するのは相当ではない」などと指摘し、東京電力と同等の責任が あるとして、国と東京電力に総額でおよそ10億1000万円の賠償を命じました。
全国の集団訴訟で、国の責任を認める2審判決は初めてで、各地で行われている裁判に影響を与える可能性があります。
原告団長「司法は生きていた」
判決のあと、原告団と弁護団が仙台市内で記者会見を行いました。
その中では、まず「国と東京電力の責任を明確に認めた ことは、事故の再発防止や被害者の全面的な救済だけでなく、被災地の復興にとっても大きな意義がある。賠償の対象地域の拡大や賠償水準の上積みを認めた点 は、原告のみにとどまらず広く被害者の救済をはかるという意味においても前進と評価できる」という声明を発表しました。
弁護団の事務局長、馬奈木厳太郎弁護士は「裁判が長期化し、判決を待たずしておよそ100人が亡くなった。この喜びを分かち合うことができないことは残念だ。東京電力と国は責任を認めて1日も早く救済すべきで、上告しないよう求めたい」と述べました。
会見後、原告団長を務める福島県相馬市の中島孝さんは「判決を聞いたとき、司法は生きていたと感じた。1審よりも踏み込んで国の政策が間違っていたことを示してくれてよかった」と話していました。
原告の果樹農家「原告1人1人に寄り添った判決」
原告の1人で福島市で果樹農家を営む阿部哲也さん(57)は、自宅のテレビで、国の責任を認めた2審判決の速報を見ると、ガッツポーズをして喜びを表していました。
阿部さんは、「原告団みんなの頑張りがこの判決に結びついたと思います。国の責任を認めることが私たちが一番望んでいたことなので、本当にほっとして涙が出そうです」と話していました。
そのうえで、「これまでたくさんの苦労や喪失感など精 神的な被害を受けてきましたが、今回の判決で心が救われほっとしています。お金の問題ではない部分はありますが、とりあえず賠償という形で心にけじめをつ けることはやむをえないと思いますので、原告1人1人に寄り添った判決になったと思います」と話していました。





                                                                                                                                                                
  
     





























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